ニュートピックス
・敗血症に対する輸液蘇生において,生理食塩液による高クロール性代謝性アシドーシスの弊害が注目され,成分調整晶質液を推奨する方向性が示されてきたが,最近の多施設ランダム化比較試験において,成分調整晶質液が生理食塩液よりも予後を改善するというエビデンスが得られていない状況である.
・過剰輸液による臓器うっ血が害であるという考え方のもと,輸液制限の有用性を検討した多施設ランダム化比較試験も行われているが,輸液制限が予後を改善するという明確なエビデンスは得られていない.
治療のポイント
・輸液の目的は体液恒常性の維持であり,①水分の補充,②電解質の補充,③栄養素の補充の3つから構成される.
・輸液蘇生とは体液恒常性が破綻した状態に対して輸液による改善を得ることであり,維持輸液とは体液恒常性が維持された状態を継続することが目的であり,両者は区別されるべきである.
・体液の分布と電解質組成は細胞内外で大きく異なっていること,各種の輸液製剤がそれぞれ体液の各成分を対象としていること,を認識する必要がある.
◆病態と診断
・体液の約2/3が細胞内液に,1/3が細胞外液に分布しているとされる.また非侵襲下では細胞外液の約25%が血漿として血管内に存在し,その他は間質液とよばれる(図).細胞内液と細胞外液は細胞膜を介して区切られており,電解質組成が異なる.間質液と血漿は血管内皮細胞を介して水分が移動することが可能であり,水分の移動には,電解質やAlbなどの浸透圧物質による膠質浸透圧や,血管内皮細胞の透過性が関与している.
・体液量の欠乏はいわゆる脱水とよばれるが,水分とNaのどちらがより喪失したかにより水分欠乏型脱水(高張性脱水)とNa欠乏型脱水(等張性脱水)に区別できる.高張性脱水は細胞内外の水分が喪失している状態であり,意識障害などの細胞機能障害を呈する.等張性脱水は細胞外液が主に喪失して