A骨髄検査の適応
骨髄は造血を行っている組織であるが,成長とともに造血能は変化し,20歳を過ぎると長管骨ではほぼ造血が行われなくなる.一方,扁平骨ではある程度造血が維持されるが,高齢になると,胸骨に比較し腸骨は脂肪髄になりやすく細胞密度が低下する.
骨髄検査は末梢血において血球数の異常や白血球分画異常,特に好中球減少,芽球出現,および異常リンパ球の出現などが認められた場合に適応となる.また,造血器腫瘍の診断および治療効果判定を目的として行われる.血球数に異常がない場合でも,悪性リンパ腫の病期診断や粟粒結核の診断のために骨髄の評価が行われる.
骨髄の検査には骨髄穿刺法と生検法があり,それぞれの特性に応じて検査を行い,場合によっては両方を行うこともある.特に骨髄液の吸引ができない(dry tap)場合は,骨髄線維症も疑われるため,骨髄生検が必須である.また,再生不良性貧血と骨髄異形成症候群の鑑別には,細胞密度や巨核球の評価が重要であるため,骨髄穿刺において低形成の場合は,積極的に骨髄生検まで行うことが望ましい.
B骨髄穿刺の方法
骨髄穿刺では塗抹標本を作製し,細胞形態や細胞化学的に診断する.また細胞表面形質や染色体,遺伝子検査のための検体が採取できる.穿刺部位は,かつては胸骨正中の第2~3肋間部位が主流であったが,大動脈損傷,心タンポナーデや縦隔血気腫などを起こす危険があるため,現在は成人では後腸骨稜が推奨されている.多発性骨髄腫や開胸術後の症例では,胸骨からの穿刺は禁忌である.また,放射線照射後は十分採取できない可能性がある.
1.消毒
穿刺部位を確認し,広く消毒する.検者は滅菌手袋をし,清潔操作にて有窓のシーツをかける.
2.局所麻酔
皮膚,皮下,骨膜の局所麻酔を行う.この際に注射針により骨膜までの距離を確認し,この長さに3~5mm程度加えた長さになるように穿刺針のストッパーを調