診療支援
治療

輸血療法
blood transfusion
園木孝志
(和歌山県立医科大学教授・血液内科学)

A輸血療法の注意点

 輸血用血液製剤は,献血による貴重な血液を原料とし,また,輸血に伴う感染症伝播や重篤な副反応の危険性があるため,適正使用に努める.輸血の適応は,臨床症状を観察し基準値(トリガー値)を満たしていることを確認して判断する.輸血療法施行前には,患者またはその家族にインフォームド・コンセントを得る.医療機関は,使用対象者の氏名・住所・その他必要な事項について記録を作成して20年間保存する.

B輸血用血液製剤

 日本赤十字社から供給される輸血用血液製剤には,「赤血球製剤」,「血小板製剤」,「血漿製剤」,「全血製剤」がある.現在,「全血製剤」はほとんど使用されない.供血者の白血球は非特異的副反応の原因になり,血液製剤には白血球除去処理がされている.また輸血後移植片対宿主病予防のため放射線照射が施行されている.200mL相当の全血から作製した輸血用製剤を1単位とよぶ.

C輸血前準備

 採血時の取り違いによる血液型誤判定を防ぐため,血液型判定は同一患者からの異なる時点での2検体を用い,ダブルチェックして決定する.交差適合試験に用いる患者検体は,原則として血液型判定検体とは別の時点で採血した検体を用いる.赤血球輸血の際には交差試験を必ず行う.血液製剤内で細菌が増殖した場合,製剤の外観が通常と異なることがあり,肉眼での観察は大切である.輸血は各製剤に対応した輸血用セットを使用して輸注する.輸血に用いる注射針のGに推奨はないが,24G注射針で約0.3mL/秒を超える速度で注入すると溶血を起こしやすい.輸血用血液製剤は他薬剤と別のルートから投与するが,やむを得ない場合,ルート内を生理食塩液で洗浄して使用する.血液型不適合輸血は重篤な溶血反応をもたらすため,輸血施行直前には携帯型電子端末などを使って,患者確認・患者血液型・輸血用血液製剤血液型を確認・照合することがきわめて重要である.

D赤血

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