診療支援
治療

代謝疾患 最近の動向
横手幸太郎
(千葉大学大学院教授・内分泌代謝・血液・老年内科学)

◆病態と診断

A高齢者糖尿病診療ガイドライン2023

 わが国では高齢化率が30%に迫り,それに伴い高齢者糖尿病も増加している.高齢糖尿病患者は重症低血糖を生じやすく,それが大血管合併症や認知症,転倒・骨折などの老年症候群を招きやすいことも知られるようになった.このような,若年者とは異なる高齢者糖尿病の課題に対応すべく,2015年に「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」が組織され,2017年に「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」が策定された.そして,2018年と2021年には,「高齢者糖尿病治療ガイド」が刊行されている.その後も高齢者糖尿病に関する新たなエビデンスが国内外で蓄積され,新しい治療薬も登場したことから,改訂作業が行われ,「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」の発行に至った.同ガイドラインでは,新たな章として「高齢者糖尿病の併存疾患」「さまざまな病態における糖尿病の治療」「高齢者糖尿病をサポートする制度」などが追加され,糖尿病と認知症,フレイル,サルコペニアとの関連,高齢者総合機能評価の手法,重症低血糖の影響,運動療法や食事療法の有効性などが,一定のエビデンスとともに示されている.さらに,SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が高齢者糖尿病においても心血管リスクを低減することや,高齢2型糖尿病患者におけるインスリン治療の単純化などにも言及している.

◆治療

ASensor augmented pump(SAP)

 内因性のインスリン分泌が枯渇した患者に対し,インスリンを皮下へ持続的に注入する持続皮下インスリン注入療法(CSII:continuous subcutaneous insulin infusion,インスリンポンプともよぶ)が選択される場合がある.CGM(,「血糖自己測定・持続血糖測定の指導」の項参照)を併用したイン

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