診療支援
治療

糖尿病性ケトアシドーシス
diabetic ketoacidosis(DKA)
熊代尚記
(金沢医科大学教授・糖尿病・内分泌内科学)

頻度 ときどきみる

治療のポイント

・十分な補液による脱水の改善.

・インスリン投与による高血糖,高ケトン体血症の改善.

・電解質補正.

・糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を誘発した病態や疾患の治療.

◆病態と診断

A病態

・インスリン作用の低下とグルカゴンの増加により,高血糖とケトン体産生が亢進する.

・ケトン体にはアセト酢酸,アセトン,3-ヒドロキシ酪酸が存在するが,DKAでは酸である3-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸がすみやかに産生され,身体の酸-塩基緩衝系を凌駕する高濃度のプロトンを生じ,結果として危険な血液pHの低下を招く.アセト酢酸と3-ヒドロキシ酪酸の平衡は3-ヒドロキシ酪酸に傾く.

・血中K濃度は,インスリン作用の低下によりみかけ上正常もしくはやや高値を示すことが多いが,全身総量としては欠乏している.血清Na濃度も,高血糖に対する浸透圧バランスの結果,低下している場合が多い.

・特殊な病態として,糖尿病薬のSGLT2阻害薬使用下で,血糖値が高くなくてもケトアシドーシス(正常血糖ケトアシドーシス)を起こすことがあるので要注意.

B診断

・口渇,多飲,多尿,脱水,意識障害,嘔吐,腹痛,呼気のケトン臭,Kussmaul大呼吸などの症状が特徴的である.

・尿中,血中ケトン体が増加するが,ニトロプルシド法の尿試験紙は3-ヒドロキシ酪酸に反応せずに陰性となるため,特に重症例では注意を要する.血中総ケトン体は3mmol/L以上,3-ヒドロキシ酪酸/アセト酢酸は3以上となることが多い.

血糖値250mg/dL以上pH<7.3,HCO3- 低下,アニオンギャップ増加,血漿浸透圧正常,血清Na濃度正常~軽度低下,血清K濃度正常~軽度上昇などの検査所見が典型的である.

◆治療方針

A十分な補液

 何よりまず,補液ルートを確保して生理食塩液を全速で投与する(250~1,000mL/時).一般的に,体重の10%程度の

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