診療支援
治療

甲状腺機能亢進症(甲状腺クリーゼを含む)
hyperthyroidism(thyrotoxic storm)
吉村 弘
(伊藤病院・学術顧問(東京))

頻度 ときどきみる

GL小児期発症バセドウ病診療のガイドライン2016

GL甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017

GLバセドウ病治療ガイドライン2019

GL甲状腺眼症診療の手引き(2020)

ニュートピックス

・米国で甲状腺眼症(バセドウ病眼症)の治療薬としてhuman monoclonal anti-IGF-1R blocking antibody(teprotumumab)が承認され,日本でも治験が開始された.

治療のポイント

・甲状腺機能亢進症の原因はほとんどがバセドウ病であるが,中毒性甲状腺結節,まれではあるがTSH産生下垂体腫瘍などがある.

・バセドウ病ではまず抗甲状腺薬にて治療を開始する.

・抗甲状腺薬の副作用の頻度は約10%である.重篤な副作用として無顆粒球症,重症肝障害,ANCA関連血管炎などがある.無顆粒球症,重症肝障害の多くは内服開始3か月以内に起こる.

・抗甲状腺薬開始後2か月間は2週間に1回副作用のチェックを行う.

・抗甲状腺薬は甲状腺機能の改善に応じて漸減していく.

・抗甲状腺薬での寛解までに1~3年かかる例が多い.本邦での抗甲状腺薬での寛解率は対象,方法によって大きく異なり19.9~67%である.

・抗甲状腺薬中止1年以内の再発率は20~30%である.

・手術,放射性ヨウ素内用療法〔RI(radioisotope)内用療法〕は,抗甲状腺薬で重篤な副作用が出現した場合,巨大な甲状腺腫を認めた場合に考慮する.

◆病態と診断

A病態

・甲状腺機能亢進症とは,甲状腺ホルモンが過剰に産生される症候群である.

・本邦では病因の大部分はバセドウ病であるが,機能性甲状腺結節,妊娠初期一過性甲状腺機能亢進症,まれではあるがTSH産生下垂体腫瘍,卵巣甲状腺腫,転移性濾胞癌などがある.

・過剰な甲状腺ホルモンにより,動悸,息切れ,発汗,手指振戦,体重減少などの症状が起こる.

・バセドウ病の病因は抗TSHレ

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