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治療

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
syndrome of inappropriate secretion of ADH(SIADH)
岩間信太郎
(名古屋大学医学部附属病院講師・糖尿病・内分泌内科)

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ニュートピックス

・2020年6月,SIADHにおける低Na血症の改善にバソプレシンV2 受容体拮抗薬トルバプタンが承認された.一方,バソプレシンV2 受容体拮抗薬モザバプタンは2021年4月に販売が中止され,2022年3月31日に保険請求期限が終了となった.

治療のポイント

・慢性低Na血症(経過が48時間以上または経過が不明の場合)において,血清Na濃度を急速に上昇させると浸透圧性脱髄症候群が生じやすい.したがって,血清Na濃度を頻回に測定し,その上昇は24時間で10mEq/L以下,48時間では18mEq/L以下とする.

・補正前の血清Na濃度が110mEq/Lを下回る低Na血症,あるいは低K血症,低栄養,アルコール中毒,肝障害などを伴う場合は,より緩やかに血清Na濃度を補正する.

◆病態と診断

・SIADHの診断基準は「間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)」を参照されたい.

・SIADHは,血清Na濃度が低下しているにもかかわらず,バソプレシン(AVP)の抑制が不十分なために抗利尿作用が持続している状態である.

・血漿浸透圧が低下すると,健常者ではAVP分泌が抑制され,水利尿が促進される.しかしながら,SIADHではAVPによる抗利尿作用が持続する結果,尿への自由水排泄が低下し,低浸透圧血症低Na血症が持続する.循環血液量ははじめに軽度増加するが,過剰なAVPにより腎集合尿細管におけるV2 受容体のダウンレギュレーションが起こり,水利尿は軽度回復する.さらに,レニン-アルドステロン系の抑制,心房性Na利尿ペプチドの分泌亢進によりNa利尿が生じる結果,循環血液量は正常範囲となる.SIADHでは低Na血症の存在下でも20mEq/Lを超える尿中Na排泄が持続する.

◆治療方針

 低Na血症が緩徐に進行した場合は症状を認めないことが多いが,慢性低Na血症

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