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治療のポイント
・ホルモン過剰産生例は摘出を考慮する.
・画像所見で悪性を疑う場合,否定できない場合は摘出を考慮する.
・経過観察中に腫瘍が増大する例では摘出を考慮する.
・副腎皮質癌を疑う場合を除き,術式の第1選択は腹腔鏡下腫瘍摘出術である.
◆病態と診断
A病態
・副腎疾患以外の精査を目的に行った画像検査で,偶然副腎に腫瘍が発見された場合を副腎インシデンタローマ(偶発腫)という.
・種々の疾患を含むため,鑑別診断が重要である.
・非機能性腫瘍が最も多く(約50%),次いでコルチゾール産生腫瘍〔サブクリニカルクッシング症候群(SCS)〕,褐色細胞腫,原発性アルドステロン症の順に多い.
・転移を含む悪性疾患が5%以上を占めるため,注意を要する.
B診断
1.良悪性の鑑別
・副腎外悪性腫瘍の既往歴を必ず確認する.
・画像検査の第1選択は単純CTで,腫瘍径と腫瘍内部のCT値を評価する.
・腫瘍径3~4cm以上,内部CT値20HU以上,経過中の増大がある場合は悪性尤度が上昇する.
2.ホルモン産生能の評価
・コルチゾール産生腫瘍では,1mgデキサメタゾン負荷前後の血中コルチゾールと早朝の血中ACTH,DHEA-Sを評価する.
・DHEA-S高値の場合は副腎皮質癌を疑う.
・褐色細胞腫は血中または尿中メタネフリン分画でスクリーニングを行う.
・原発性アルドステロン症では血中アルドステロン,レニンをまず測定する.
◆治療方針
悪性を疑う場合,ホルモン過剰産生を認める場合が主たる手術適応だが,SCSでは併存症やコルチゾール産生能を勘案して,個別に手術の適否を判定する.手術適応のない場合も,明らかに良性を示唆(内部均一,CT値が10HU未満)する非機能性小腫瘤を除き,定期的な経過観察を行う.
■専門医へのコンサルト
・良悪性の鑑別が困難な場合やホルモン産生腫瘍の場合は,すみやかに副腎専門医にコンサルトする.
エビデン
関連リンク
- 今日の治療指針2023年版/副腎インシデンタローマ(偶発腫)
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- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/12 副腎腫瘍
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- 臨床検査データブック 2023-2024/非機能性副腎腫瘍
- 新臨床内科学 第10版/2 膵神経内分泌腫瘍
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