頻度 あまりみない(MEN1,MEN2それぞれ3万人に1人程度)
GL多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック(2013)
治療のポイント
・多発性内分泌腫瘍症(MEN)に合併する内分泌腫瘍では,散発例とは異なる術式が選択される場合や,手術適応が異なる場合がある.
◆病態と診断
A病態
・MEN1では原発性副甲状腺機能亢進症(95%),膵消化管神経内分泌腫瘍(60%),下垂体腫瘍(50%)が3主徴で,ほかに副腎皮質腫瘍や皮膚腫瘍もみられる.
・副甲状腺機能亢進症が初発病変のことが多く,約半数の患者は20歳代に発症しているが,発端者(家族内で最初の患者)が診断されるのは40歳代以降が多い.
・膵消化管神経内分泌腫瘍の一部は悪性化し,予後決定因子となる.
・MEN2では甲状腺髄様癌(ほぼ100%),副腎褐色細胞腫(70%)の発症頻度が高く,MEN2Aでは副甲状腺機能亢進症(10%),MEN2Bでは眼瞼や舌,口唇の粘膜神経腫(100%)を伴う.MEN2のうちMEN2Aが95%以上を占める.
・甲状腺髄様癌は大多数の例で成人前に発症しているが,発端者が診断されるのは30~40歳代が多い.
B診断
・主な2臓器に病変を認める(異時性でもよい),1臓器病変とMENの家族歴がある,1病変臓器と原因遺伝子の病的バリアントが確認されている,のいずれかを満たせば診断が確定する.
・診断のための遺伝学的検査は,MEN1(原因遺伝子MEN1),MEN2(RET)とも保険収載されている.ただし,RET遺伝学的検査の適用病名は甲状腺髄様癌のみである.
・MEN1では,複数病変を有し家族歴がある患者の約90%で病的バリアントが同定される.甲状腺髄様癌と褐色細胞腫の既往がある患者では,ほぼ100%にRETの病的バリアントが同定される.
◆治療方針
腫瘍性病変であり,治療の主体は外科手術であるが,以下の病変では散発例と異なる対応がとられる.
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