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治療のポイント
・成熟期女性に多い硬結,疼痛,乳頭分泌を症状とする良性疾患であり,外来で遭遇することが最も多い乳腺疾患である.
・乳癌が否定されれば治療の必要はなく,疼痛の症状は乳癌に対する不安が除かれると軽快することもある.
◆病態と診断
A病態
・エストロゲンの相対的過剰の状態が原因で生じる乳腺の非腫瘍性,非炎症性の増殖性病変であり,閉経後には徐々に頻度は減少し症状も軽快する.
・病理学的には増殖性変化と退行性変化が共存する(ANDI:aberrations of normal development and involution)という病態で,fibrocystic changeともよばれる多彩な組織像を示す.
・上皮成分の病理学的所見としては,乳管過形成,小葉過形成,腺症,嚢胞,アポクリン化生がみられる.間質成分で線維症が起こると乳管の通過障害をきたして嚢胞を形成する.また上皮成分と間質成分の増殖が限局性に生じると線維腺腫性過形成となる.
・これらの多彩な組織像を呈する病変群の総称として,現在の取扱い規約では“いわゆる乳腺症”に分類される良性病変であるが,上皮成分の乳管過形成や小葉過形成に異型を伴う場合は乳癌との鑑別が問題になり,また乳癌の発症リスクも高いため,定期的な経過観察が必要である.
B診断
・乳房痛(自発痛および圧痛)と硬結を主訴に来院することが多い.乳房痛は両側性で月経前に強くなることや硬結の部位に一致することが多いが,あまり一定しないこともある.また乳頭分泌を伴うこともあり,片側性で血性の場合は,乳管内乳頭腫や乳癌との鑑別のために分泌物の細胞診が必要である.
・検査としてはマンモグラフィを行うが,乳腺の増殖性変化が主体であり高濃度乳房のことが多く,超音波検査が有用である.超音波所見としては両側性でびまん性に腫大した乳腺の中に微細な低エコー域が散在するmottl