診療支援
治療

膠原病および類縁疾患 最近の動向
亀田秀人
(東邦大学教授・膠原病学分野(大橋))

◆病態と診断

A単一細胞解析と網羅的解析

 単一細胞解析の普及に伴い細胞の多様性に対する理解が深まり,T細胞やB細胞のみならずマクロファージ線維芽細胞など多くの細胞がサブセットに分類された.さらには遺伝子発現(トランスクリプトーム)から蛋白質(プロテオーム),糖鎖(グライコーム),脂質(リピドーム)と網羅的解析の範囲が拡大し,単一の分子異常では説明困難な多様性に富んだ膠原病の病態・病因の探究は新たなステージを迎えている.健常人と特定の疾患患者の比較,異なる疾患患者の比較,同一疾患(さらには患者)の活動期と寛解期の比較,そして異なる病変臓器同士やそれらと末梢血との比較などにより,膠原病の病態・病因の全貌が次第に明らかになることが期待されている.このことは個別化医療の推進にも不可欠である.

B脊椎関節炎の国内疫学と類縁疾患を含めた適正診断

 脊椎関節炎は,現時点ではHLA-B27との関連が認められ体軸関節炎を生じる疾患群に限定されているため,例えば掌蹠膿疱症性骨関節炎(AO:pustulotic arthro-osteitis)は類縁疾患と位置づけられる.HLA-B27の保有率が0.3%程度と極端に低いわが国では,強直性脊椎炎が約3,200人,X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎が約800人と推計されたが,後者の診断には特に正確な画像診断が必要であるために適正診断の確立と普及が喫緊の課題となっている.有効性と安全性のバランスの優れた分子標的薬が最も多く開発されている領域でもあるため,適正診断の重要性が一層高まっている.PAO診断ガイダンス2022(改訂Sonozaki基準)の要点は(表1)である.

◆治療

A新規に承認された治療薬

 2022年9月には,2つの抗腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)ナノボディと抗血清アルブミンナノボディが融合した3量体構造を有す

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