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治療

一過性脳虚血発作の内科的治療
medical management for transient ischemic attack(TIA)
八木田佳樹
(川崎医科大学教授・脳卒中医学)

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GL脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]

治療のポイント

・一過性脳虚血発作(TIA)確定診断例は脳梗塞発症リスクが高く,特に症状出現後48時間以内が高リスクである.このため可及的すみやかに予防治療を開始する必要がある.

・TIAでは脳梗塞同様,原因診断を行い,それに応じた予防治療方針をたてる.

◆病態と診断

A病態

・TIAとは局所脳または網膜の虚血に起因する神経機能障害の一過性(24時間以内)のエピソードであり,急性梗塞の所見がないものである.

・虚血を生じる原因は脳梗塞と共通である.心疾患,動脈硬化,細動脈障害が多いが,その他の原因もありうる.

B診断

・受診時にはすでに症状が消失していることが多いため,TIAの診断には問診が重要である.TIA疑い例の初診時には,症候の内容,発症日時,持続時間,発作回数などの情報を聞き取る.

・失神,てんかん発作,低血糖発作など,症状がTIAと類似するが脳血管障害ではない症例を鑑別する必要がある.

・TIA後の脳梗塞発症リスク層別化にはABCD2 スコアを用いる.また発症48時間以内,1週間以内に複数回の症状出現がある症例は高リスクである.

・TIA疑い例では①頭部MRI・MRA,②MRA,造影CTもしくは超音波検査を用いた頸部血管病変評価,③12誘導心電図を初診時に行う.

・症状が消失していても頭部MRIで急性期脳梗塞病巣が確認されれば,脳梗塞と診断する.

・塞栓源となりうる頭頸部血管病変や心房細動などの塞栓源心疾患があれば,脳梗塞発症リスクは高いと考える.

・脳虚血を生じうる原因疾患は多い.血圧・脈拍測定,血液検査などのほか,必要に応じて下肢静脈エコー,経食道・経胸壁心エコー,造影CT検査を追加する.

◆治療方針

 TIAの可能性が高いと診断した場合は,脳梗塞発症が差し迫っていると考える必要がある.このため脳梗塞予防治療をすみやかに開始する

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