診療支援
治療

脳血管障害の合併症(誤嚥性肺炎を中心に)
complications after stroke(post-stroke aspiration pneumonia)
平野照之
(杏林大学教授・脳卒中医学)

GL脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]

GLJAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―(2014)

治療のポイント

・脳卒中後の合併症として感染症が高率に発症する.なかでも尿路感染症,誤嚥性肺炎が多い.

・高齢,ADL低下,意識レベル低下は誤嚥性肺炎のリスクであり,不顕性誤嚥(silent aspiration)に起因するものも多い.

・早期から嚥下機能を評価し,口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションなどで発症予防に努める.

・誤嚥性肺炎には口腔内常在菌をターゲットに広域抗菌薬から開始する.予防的投与に科学的根拠はない.

◆病態と診断

A病態

誤嚥性肺炎は,嚥下機能障害と関連して発生する肺炎である.

・脳卒中後には延髄病変による球麻痺型(咽頭期の遅延を主とする)と,より上位の両側病変による仮性球麻痺型がある.

・脳卒中急性期の院内肺炎(HAP:hospital-acquired pneumonia)や慢性期の医療介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)における誤嚥性肺炎の頻度は高く,再発も多い.

B診断

・誤嚥性肺炎の症状は発熱,咳嗽,喀痰であるが,高齢者では食欲低下や活動性低下のみのことがある.食事中のむせや食後の咽頭部のゴロ音,咳,痰の増加の既往があれば誤嚥性肺炎を疑う.

・診断はSpO2 低下,白血球増加,CRP値上昇,画像検査での肺炎像の確認による.胸部X線写真で判断に苦慮する場合,胸部単純CTが有用である.

・陰影は一般的に左右の中肺野背側に生じ,気管支の角度の違いから右側に多い.

◆治療方針

A嚥下障害に対する治療

1.嚥下評価,摂食・嚥下リハビリテーション

 脳卒中急性期の嚥下障害は70%近くに認められ,経口摂取開始前に水飲みテストや反復唾液嚥下テストで評価する.歯磨き・口腔ケアは口腔内細菌を減少さ

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