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治療

無症候性脳血管障害(未破裂脳動脈瘤を除く)
silent cerebrovascular diseases
伊藤義彰
(大阪公立大学大学院教授・脳神経内科学)

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GL脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]

治療のポイント

・無症候性脳血管障害では,通常の脳血管障害と同様に,原因となる疾患やリスク因子を評価し治療することが重要である.

・無症候性脳梗塞に一律に抗血小板薬を投与しない.

・微小脳出血では血圧の管理に注意し,抗血栓薬の投与は慎重に行う.

・無症候性頸動脈狭窄病変は,中等度狭窄までなら血行再建術の適応はない.

◆病態と診断

A病態

・病歴にて明らかな脳卒中のエピソードや自覚症状がなく,健診などでたまたま撮影した画像にて脳血管障害を認めるものを,無症候性脳血管障害という.

・さらに脳血管障害を引き起こす可能性のある血管病変(動脈硬化,動脈解離,血管奇形,動脈瘤)や虚血性白質病変も無症候性脳血管障害に加えることがある.

・無症候性脳梗塞は,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞といった通常の脳梗塞と同様な機序で発症する.梗塞巣が小さい場合,病巣徴候を呈さない領域の脳梗塞の場合,夜間に発症した一過性脳虚血発作の場合,などでは無症候性となる.

・無症候性脳出血は,血腫が小さく病巣徴候を呈さない脳出血を指す.微小脳出血(CMB:cerebral microbleeds)は高血圧症,脳アミロイド血管症などを背景に,前者は基底核に,後者は大脳皮質・皮質下白質に数mmの出血病巣をきたすものを指す.

・無症候性脳梗塞,脳出血は,脳卒中のエピソードとして突発する神経症状を呈することはないが,病巣が多発することで,認知機能障害,歩行障害,ふらつき,構音障害,パーキンソニズムなどの症状に関与する場合がある.症状は軽く加齢症状と区別がつきにくい.

・脳ドックなどの健診によって,無症候性の血管病変がみつかる.病変の部位,大きさ,程度などから発症のリスクを評価し,高リスクであれば外科的処置を行う.

・虚血性白質病変および血管周囲腔の拡大は,加齢によ

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