診療支援
治療

高血圧性脳症
hypertensive encephalopathy
竹川英宏
(獨協医科大学病院・脳卒中センター長)

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GL高血圧治療ガイドライン2019

治療のポイント

・すみやかに脳卒中などを除外し,経静脈的降圧薬で降圧を開始する.

・最初の2~3時間で平均血圧の25%程度の降圧を目標にする.

・経静脈的降圧薬はできるだけ短期間とし,経口降圧薬に変更する.

◆病態と診断

A病態

・長期高血圧例は220/110mmHg,正常血圧例は160/100mmHg以上で発症しやすい.

・脳循環自動調節能障害による血管原性脳浮腫が主体である.

B診断

・急性発症の頭痛,嘔気,嘔吐や視野異常がみられやすく,重症例ではけいれん,傾眠,錯乱,昏睡が出現する.

・後部可逆性脳症症候群(PRES:posterior reversible encephalopathy syndrome)を合併しやすく,大脳両側後頭・頭頂葉領域の皮質下白質などに病変がみられる.

◆治療方針

 すみやかに脳卒中などを除外し,全身状態のモニタリング下ですみやかに降圧治療を行う.急激な降圧は臓器障害を生じる可能性がある.降圧は最初の2~3時間で平均血圧の25%程度(可能であれば1時間以内に収縮期血圧140mmHg未満),次の2~6時間で160/100mmHg前後,その後24~48時間かけて140/90mmHg未満を目標とする.経静脈的降圧薬で開始し,可及的すみやかに経口降圧薬に変更する.

Px処方例 下記1)を使用する.効果が乏しい場合は2)を検討する.1),2)とも生理食塩液または5%ブドウ糖注射液で希釈し持続静注を行う.血圧が安定したのちはCa拮抗薬を中心とした経口降圧薬に変更する.

1)ニカルジピン(ペルジピン)注 0.5~6μg/kg/分で持続静注

2)ジルチアゼム(ヘルベッサー)注 5~15μg/kg/分で持続静注

Px使い分けのポイント

・first line:脳組織酸素供給を減少させないため1)を使用する(高血圧治療ガイドライン2019

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