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治療

下垂体腺腫
pituitary adenoma
松尾孝之
(長崎大学教授・脳神経外科)

頻度 ときどきみる

◆病態と診断

A病態

・下垂体腺腫は下垂体前葉細胞由来の良性腫瘍であり,臨床的な分類として高頻度なものから順に,非機能性腺腫,プロラクチン(PRL)産生腺腫,成長ホルモン(GH)産生腺腫,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生腺腫,甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生腺腫がある.

・病理組織学的には,下垂体ホルモン産生能中心の分類から,より生物学的な特徴を重視し下垂体特異的な転写因子の発現をもとに腫瘍細胞の分化系統に基づいた分類が提唱されている(下垂体腫瘍WHO分類2017).

B診断

・視神経・視交叉が増大した腫瘍に圧排されることにより生じる視野・視力障害(耳側半盲など),下垂体機能亢進や低下などの内分泌学的な異常に基づいたさまざまな臨床症状に加えて,MRIを中心とする画像診断および内分泌学的検査により診断を行う.

◆治療方針

 治療方針は,効果的薬剤の有無や腫瘍の海綿静脈洞への浸潤などにより異なるが,経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術(TSS:transsphenoidal surgery),薬物療法,定位的放射線療法が選択される.

A非機能性下垂体腺腫

 効果的な薬剤はなく,手術(TSS)が第1選択となる.MRI機器の普及などにより無症候性の非機能下垂体腺腫の診断も増加しているが,腫瘍が鞍上部へ進展し視神経・視交叉との接触を認めないものでは経過観察が選択される(日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2019」).

B乳汁分泌ホルモン(PRL)産生腺腫

 治療の第1選択はドパミンD2 受容体作動薬による薬物療法である.多くの症例でPRL値の低下と併せて腫瘍体積の縮小が期待できる.治療の目標は,高PRL血症の改善,性腺機能の回復,腫瘍体積の制御であり,性腺機能の低下がないものや,閉経後の患者で腫瘍体積の小さいものに関しては経過観察の選択肢もある.

 治療には薬物療法,手術療法,放射線療法

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