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治療

パーキンソン病の内科的治療
medical treatment of Parkinson's disease
永井将弘
(愛媛大学医学部附属病院特任教授・臨床薬理神経内科)

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GLパーキンソン病診療ガイドライン2018

ニュートピックス

・パーキンソン病疾患修飾薬として開発された抗αシヌクレイン抗体(cinpanemabとprasinezumab)の臨床試験の結果が2022年に報告されたが,両抗体薬ともプラセボとの有意差は認められず有効性は確認されなかった.

・ホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注(ヴィアレブ)が発売され,症状の日内変動(ウェアリングオフ)に対する治療の選択肢が増えた.

治療のポイント

・根治的治療法はなく,主に脳内ドパミン系に作用する薬物を用いた対症療法が中心となる.

・薬物治療は一生涯続くため,短期的な症状改善のみを目指すのではなく,中・長期的に運動合併症(ウェアリングオフ,ジスキネジア)や幻覚,衝動制御障害などの副作用の発現をできるだけ抑えることも考慮した治療を行う.

・抗パーキンソン病薬の種類は多いため,各薬剤の薬理作用,薬物動態を理解したうえで薬剤選択,併用療法を行う.特に,パーキンソン病薬物治療のゴールドスタンダードであるレボドパの薬物動態的短所(60~90分の短い半減期,消化管吸収の不安定)を理解したうえで使いこなすことが重要である.

・進行期にみられる嚥下障害,姿勢保持障害,すくみ足などは薬物治療に抵抗性のことが多い.

・運動症状以外に非運動症状(認知症,抑うつ,睡眠障害,疼痛,便秘,頻尿,血圧変動など)も合併しやすく,QOLに大きく影響するため,抗うつ薬,鎮痛薬,便秘薬などを使用し適切に対処する.

◆病態と診断

A病態

・中脳黒質のドパミン神経細胞にαシヌクレインが蓄積することにより,ドパミン神経細胞が変性脱落する(病理学的にはレヴィ小体がみられる).その結果,線条体においてドパミンが欠乏し,大脳基底核回路のバランスが崩れ,運動緩慢筋強剛静止時振戦,歩行障害などの運動症状を呈する.

・進行は緩やかであるが,一部に相対的

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