診療支援
治療

手根管症候群(内科)
carpal tunnel syndrome(CTS)
小野賢二郎
(金沢大学大学院教授・脳神経内科学)

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治療のポイント

・内科的治療としては,安静,ステロイド内服・局所注射が推奨されている.

・症状の改善が得られない場合には必要以上に内科的治療を継続することなく,外科的治療を検討する必要がある.

◆病態と診断

A病態

・手根管症候群の原因は,手根管内における正中神経の圧迫や虚血である.

・特発性が最多で,透析アミロイドーシスの1症状として発症することもある.両側性も多い.

・リスク因子として肥満,更年期,手首の過剰使用,関節リウマチ,透析歴,甲状腺疾患などが報告されている.

B診断

・しびれや筋萎縮の領域をしっかり把握することが重要である.

・電気生理学的検査は診断に推奨されているが,初期から中等度の障害である場合正常なこともあること,一部で偽陽性があること,症状の重症度と必ずしも一致しないことに注意が必要である.

・MRIや超音波などは,手根管内の占拠性病変の検出に有用である.

・病初期に多い症状は,夜間に強い手指の痛みやしびれである.痛みやしびれは次第に持続的になり,さらに進行すると手指の筋力低下や母指球の筋萎縮を伴う.しびれや痛みの範囲は,正中神経領域を超えることもある.

・診断方法として,Phalen徴候(手関節を最大屈曲して1分間以上保持し,しびれが誘発されると陽性),Tinel徴候(手根管付近を叩打することで正中神経支配領域に異常感覚が放散すれば陽性),Flick徴候(手を振ることによって,しびれ・痛みの症状が軽快される現象)などがあるが,単一の手法での診断精度は高くないため,複数の診察法で確認する.

◆治療方針

 治療の主目的は正中神経の損傷を抑え,症状の緩和と機能維持をはかることである.まずは安静で経過観察し,症状が持続するようなら,薬物治療を行う.保存療法が無効な例や重症例には外科的治療も検討する.

A薬物治療

 非ステロイド性抗炎症薬,神経障害性疼痛治療薬,ビタミンB製剤,利

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