診療支援
治療

脳血管障害による失語症のリハビリテーション
rehabilitation of post-stroke aphasia
大沢愛子
(国立長寿医療研究センター・リハビリテーション科医長(愛知))

治療のポイント

・失語症の原因と病態を把握し,言語機能を詳細に評価したのちに言語聴覚療法を開始する.

・残存する機能を可能な限り活かし,コミュニケーション能力とQOLの向上をはかる.

・家族や関係者の病状理解を得るとともに,社会的な支援も行う.

◆病態と診断

A病態

失語症は,獲得された言語機能が脳損傷によって障害を受けた状態をいい,言語の表出や理解に障害を認める.

・ブローカ野(下前頭回)とウェルニッケ野(上側頭回後方)を中心とする広範囲な大脳皮質・白質により構成される言語野(言語中枢)の損傷で生じる.

・言語野は,90%以上,左大脳半球に存在するが,右利きの数%,左利きの30~50%では右大脳半球に存在する.

・原因となる疾患の病態や脳損傷の場所,発症や受傷からの時期などにより出現する症状や回復の程度が異なる.

B診断

・失語症の古典的分類は,発話の流暢性,言語理解,復唱の可否により分けられる.流暢性は,発話の速度や努力性,休止,構音の歪み,句の長さ,プロソディー(韻律)などによって規定される.

・失語症と鑑別を要するのは,構音障害発語失行である.失語症では,言語の表出と理解の両者で障害を生じるが,構音障害や発語失行は言語の表出面のみに限定された障害である.また,構音障害は,発声発語器官の筋力低下や協調運動障害によって話し言葉が不明瞭になったものである.発語失行は,発声発語器官の麻痺や失調,不随意運動などの運動障害がないにもかかわらず,発話に努力を要し,滑らかさが失われる.ブローカ失語に伴うことが多いが,まれに単独でもみられる.意識障害や認知症を伴う場合には,言語評価が正しく実施できているか,解釈時に注意が必要である.

・なお,末梢受容器や表出器官の損傷,精神障害,心因性によって生じる言語障害は失語症とはいわない.また,言語能力の獲得前に障害された発達性言語障害は失語症とはいわない.

◆治療方

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