診療支援
治療

精神疾患 最近の動向
村井俊哉
(京都大学大学院教授・精神医学)

◆病態と診断

A診断基準の改訂

 精神科領域の疾病分類・診断基準としては,米国精神医学会(APA:American Psychiatric Association)が作成したDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)と,世界保健機関(WHO:World health Organization)が作成したICD(International Classification of Diseases)が,国際標準として広く用いられている.DSMおよびICDは,それぞれが時代とともにバージョンアップを重ねているが,2022年は,DSM-5(DSM第5版)の部分改訂版であるDSM-5-TRが出版され,また,ICD第11版(ICD-11)が施行される年となった.直前の版となるDSM-5の出版が2013年,ICD-10の出版が1992年であるから,最新版であるDSM-5-TRおよびICD-11は過去数十年の精神医学の知見の集大成を反映させたものとなっているといえる.DSM-5-TRおよびICD-11は,今後10年は精神医学の標準となっていくことが予想される.なお,DSM-5-TRとICD-11の間には一部に違いがあり,例えば,ICD-11ではゲーム症や複雑性心的外傷後ストレス症が新たな病名として採用されたが,DSM-5-TRでは採用されていない.ただし,2013年のDSM-5がICD-11の草案に沿って作成されたこともあり,DSM-5-TRとICD-11との間での大幅な相違はない.

 DSM-5-TR日本語版は2023年6月に刊行され,ICD-11もその日本語版が近々に出版される予定であるが,それらの日本語版では,時代の変化に応じるかたちで,代表的な専門用語のいくつかで訳語の変更が予定されている(→キーワード2024)

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