診療支援
治療

ギャンブル行動症
gambling disorder
鶴身孝介
(京都大学大学院・精神医学)

頻度 よくみる

ニュートピックス

・コロナ禍でオンラインギャンブルを対象とする患者の割合が増加している.

治療のポイント

・治療意欲を引き出すことが重要.

・適応のある薬剤はなく,心理社会的治療が中心.

・家族支援も重要.

・拙速な債務整理は再燃のリスクを高める.

・糖尿病などの慢性疾患と同様に再燃を繰り返すことが多く,長期的な辛抱強い支援が肝要.

◆病態と診断

A病態

・小児期逆境体験が発症に影響との報告がある.

・賭け金が増大し,本人や周囲の日常生活や人間関係に悪影響を及ぼすに至るもギャンブル行動の制御が困難

・負けをギャンブルで取り戻そうとして悪循環に陥る.

・ギャンブルへの強い欲求を認め,ギャンブルのことばかり考え,ギャンブルができない際には焦燥感を認める.

・ギャンブル資金捻出のための借金や,行為を隠すための嘘がみられることもある.

B診断

・米国精神医学会によるDSM-5-TRや,世界保健機関(WHO)によるICD-11などの診断基準を用いる.

・SOGS(South Oaks Gambling Screen)やLOSTなどのスクリーニングツールも存在する.

・躁エピソードやパーキンソン病治療薬によるものなどの鑑別や併存症に注意.

◆治療方針

A批判せず支持的な態度を心掛ける

 患者は往々にしてすでに追い詰められており,批判は再燃につながる.受診に踏み切った行動へのねぎらいから治療を開始する.治療経過で再燃した際にも,批判せず今後に活かしていく方策を検討する.

B治療の動機づけを高める

 動機づけ面接法を用いて治療意欲を引き出し,良好な治療関係を構築する.

C心理社会的治療

 治療意欲の高まりをみて心理社会的治療を積極的に行う.専門医療機関や行政機関などで行われる認知行動療法をベースとした,個人または集団プログラムへの参加が一般的.プログラムで使用するテキストは書店やオンラインストアで入手可能なものもある.

D

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?