頻度 よくみる
治療のポイント
・患者ごとのせん妄リスクを評価し,予防的介入を行う.
・苦痛の緩和,環境調整などの非薬物療法的介入を行いながら,全身状態の改善を目指す.
・薬物療法は対症療法であり,有害事象に留意する.
・医師だけでなく,看護師,薬剤師などと連携・協力して患者・家族に対応する.
・転倒転落や点滴ラインの自己抜針などから患者の安全を守る対策を講じる.
◆病態と診断
A病態
・個々の患者の脆弱性をベースに,身体疾患や薬剤などにより惹起される急性脳機能不全である.
・神経炎症や酸化的ストレス,神経内分泌学的異常などによる神経伝達物質のアンバランスから発症すると想定されている.
・身体的苦痛や不動化,心理的ストレスなどにより悪化,遷延する.
・死亡や機能低下,認知症発症などの中長期的な予後不良と関連する.
・ICU入室患者では,身体的重症度や治療環境などから高頻度にみられる.
B診断
・診断のためのバイオマーカーは現時点ではなく,診断基準に沿って行う.
・注意障害と失見当識や幻視などの認知・知覚障害が急性に発症して,動揺性に経過する場合に診断される.
・多くの患者では,興奮や活動性低下などの精神運動性障害,不眠や昼夜逆転などの睡眠覚醒リズム障害を伴う.
・興奮や易怒性を呈する過活動型,体動や会話が減少する低活動型,両者を呈する混合型の3型に分類される.
◆治療方針
A予防的介入
入院患者に対しては,入院時にせん妄リスク因子を評価し,積極的にせん妄リスク薬剤の変更,環境調整,患者説明などを行う.70歳以上の高齢者,全身麻酔による手術患者,認知症患者,せん妄の既往をもつ患者には特に注意する.
新規睡眠薬のラメルテオン,スボレキサントにはせん妄の予防効果を示唆する報告があり,スボレキサントの同効薬であるレンボレキサントを含め,せん妄リスクを有する患者の不眠への選択肢になり得る.
B病因の同定と介入
入院理由となっ