診療支援
治療

自殺の予防
suicide prevention
大塚耕太郎
(岩手医科大学教授・神経精神科学)

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GL自殺未遂患者への対応 救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き(2009)

GL精神科救急医療ガイドライン2022年版

GL病院内の自殺対策のすすめ方 改訂版(2023)

ニュートピックス

・2022年,5年ごとの見直しで「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」が閣議決定された.

治療のポイント

・自殺危険度として,自殺念慮や自殺の危険因子を評価する.

・心理的ケア,環境の判断,心理社会的問題の解決への働きかけが必要である.

◆病態と診断

A病態

・何らかの心理社会的問題を抱え,絶望感や無価値感が出現し,自殺以外に問題を解決できないと追い詰められ,自殺念慮が生じ,不安や焦燥感から衝動性が強まり,自殺企図に至ってしまうことが少なくない.

B診断

・自殺予防では自殺念慮,自殺企図や自傷行為,自殺の危険因子を継続的に評価し,自殺の危険度を判断することが大切である.

・次に,メンタルヘルス不調の徴候を把握し,精神疾患として気分症(うつ病や双極症),適応反応症,統合失調症,物質関連症,症状性・器質性精神疾患などの鑑別診断を行う.背景にうつ状態を認めることが多いが,統合失調症の場合では「死ね」というような命令性の幻聴が存在することもある.

・加えて,健康問題,職場問題,経済問題,人間関係などの心理社会的要因やストレスを評価する.

・自殺未遂例では企図手段を特定し,重症な手段の場合には特にリスクが高いことに留意する.

◆治療方針

A患者へのかかわり方と心理的ケア

 情緒的支援として温かみのある接し方,共感的な姿勢,傾聴やねぎらいが必要となる.診察では,例えば,生活状況や食欲,睡眠,体調について話をはじめ,徐々に悩みごとや自殺念慮の話に触れるとよい.

 精神科的治療の必要性を説明し,必要により精神疾患へのプライマリ・ケア,初期治療の導入を行う.

B

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