診療支援
治療

精神科救急
emergency psychiatry
八田耕太郎
(順天堂大学大学院教授・精神行動科学)

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GL精神科救急医療ガイドライン 2022年版

ニュートピックス

・日本精神科救急学会による「精神科救急医療ガイドライン」が2022年に改訂された.

治療のポイント

・即応性・確実性と軌道修正可能・安全性を並立する.

・薬剤選択では現場感覚と実証性の双方を勘案する.

・長期展望を踏まえた治療選択をする.

◆病態と診断

A病態

・精神科救急医療機関に搬送あるいは受診する患者は,精神運動興奮,急性精神病状態,躁状態,激越うつ,意識変容(せん妄),カタトニア,パニック発作といった状態像を呈し,幻覚妄想,著しい焦燥,あるいは情動不安定のためしばしば現実検討能力が低下して行動の予測が困難である.

・これらの状態は統合失調症・双極症などの精神疾患や,アルコール・覚醒剤などの物質に起因する頻度が高いが,脳炎・頭蓋内占拠性病変・内分泌疾患・膠原病などの重篤な身体疾患が潜在していることもまれでなく,医薬品の副作用の場合もある.

・興奮や交感神経系亢進のために,脱水や筋原性酵素合成亢進といった生理学的異常をきたしやすい.

B診断

・状態像診断と身体疾患の有無の検討,尿中乱用薬物検査を併行する.最終診断は米国精神医学会のDSM-5あるいはWHOのICDによる.

◆治療方針

 興奮状態の救急場面では静穏化のために即応性・確実性が求められるが,重篤な身体疾患が潜在する可能性や生理学的異常への配慮から,軌道修正可能・安全性を並立する必要がある.救急状況のエビデンスは作られにくいため,薬剤選択では現場感覚と実証性の双方を勘案する必要がある.さらに,長期展望を踏まえた治療選択が求められる.

 また,日本精神科救急学会の「精神科救急医療ガイドライン 2022年版」も参照されたい.

A静穏化あるいは鎮静

1.内服に応じる場合

 焦燥・興奮が強くても幻聴や被害妄想が活発でも,医療者の誠意・熱意が伝わる,つまり陰性症状や人格偏倚が顕著

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