診療支援
治療

精神科地域ケア
community-based psychiatric care
山下俊幸
(京都府立洛南病院・名誉院長)

A概要

 精神科地域ケア(以下,地域ケア)は,これまで精神疾患や精神障害のある人を中心に考えられてきたが,今日ではひきこもり,虐待,孤立・孤独,自死予防など,精神保健医療福祉上のさまざまなニーズを有する人が地域で安心して暮らせるよう,相談窓口,医療,障害福祉・介護,住まい,就労などのサービスを身近な地域で受けられることが重要である.国は2017年に示した「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築推進をはかるため,2022年新たに検討会報告書を作成した.地域ケアを進めるためには,地域の社会資源や精神保健医療福祉システムを理解し,これらの関係機関と連携・協働し,必要に応じ多職種(医師,看護師,精神保健福祉士,作業療法士,公認心理師など)でケースマネジメントを行い,各職種がそれぞれの役割を担うことが大切である.今日,地域ケアにおいてはアウトリーチ支援が重要で,医療機関による訪問診療,訪問看護,往診に加え,包括型地域生活支援プログラム(ACT:assertive community treatment),個別就労支援プログラム(IPS:individual placement and support)など多職種チームによる支援が求められている.

B精神科地域ケアの広がり

1.普及啓発(1次予防)

 精神疾患や精神障害に対する国民の理解(メンタルヘルスリテラシー)は今なお不十分で,相談や受診をためらうことにより早期支援が遅れたり,精神障害のある人の社会参加の支障になることもある.地域,学校,職域などさまざまな領域でメンタルヘルスリテラシー向上の取り組みが必要である.

 都道府県・政令指定都市には「精神保健福祉センター」「ひきこもり地域支援センター」「地域自殺対策支援センター」が設置され,精神保健福祉士や公認心理師を中心に普及啓発や相談支援が行われている.また,災害時に精神保健医療活動支

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