診療支援
治療

急性放射線障害
acute radiation injury(ARI)
岡崎龍史
(産業医科大学教授・放射線衛生管理学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・眼の水晶体の障害は,急性でも慢性でも0.5グレイで生じると考えられた.そのため,2021年4月1日より眼の水晶体の被曝線量限度が100ミリシーベルト/5年以内および50ミリシーベルト/1年以内に改正された.5年間につき100ミリシーベルトを超えるおそれのある医師であって,その行う診療に高度の専門的な知識経験を必要とし,かつ,そのために後任者を容易に得ることができない者は,2023年4月1日~2026年3月31日の間,3年間につき60ミリシーベルトおよび1年間につき50ミリシーベルトの経過措置がある.

治療のポイント

・2グレイ未満であれば,鎮静や血液検査などの経過観察をする.2~6グレイで,輸血や抗菌薬を用いる.6~10グレイで,輸血や骨髄移植を行う.10グレイ以上は電解質の補正などの対症療法となる.

・グレイは臓器キログラムあたりに吸収されたエネルギー量(ジュール/キログラム)で示される吸収線量.シーベルトは放射線加重係数によって補正した等価線量(各臓器の被曝量)とさらに組織加重係数で補正した等価線量の総和を実効線量(個人被曝線量)として用いる防護量.γ線やX線の被曝の場合,1グレイは1シーベルト,アルファ線の場合は1グレイが20シーベルトとなる.

・放射性物質の体内取り込みでは,核種によって排泄促進薬は異なる.

◆病態と診断

A病態

・急性障害は1グレイ以上で生じ,前駆期(48時間以内),潜伏期(0~3週間;無症状),発症期(感染症出血脱水ショック神経症状など),回復期(死亡)という経過をとる.線量が高ければ,症状は早く現れる.

・急性全身均等被曝したとき,骨髄死は2~10グレイ,胃腸死は10~50グレイ,中枢神経死は50グレイ以上で生じる.

B診断

個人線量計ホールボディカウンターなどで被曝量を確定することが重要である.0.2グレイ以上で

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