頻度 よくみる
ニュートピックス
・有機溶剤中毒予防のための法整備以降においても,規制の対象外にあった有機溶剤によるいくつもの新たな健康障害の発生を私たちは経験した.この経験を踏まえた規制の見直しにより,法令に記載されていない有機溶剤を含む化学物質に対しても自律的なリスク管理を行うことが各企業に義務付けられた.
◆病態と診断
・有機溶剤とは,ほかの物質を溶かすことのできる常温で液体の有機化学物質の俗称である.有機溶剤の多くは脂溶性であり,ヒトの血液脳関門を容易に通過する.
・産業現場において有機溶剤は主に経気道的あるいは経皮的に吸収される.経気道曝露では肝臓における代謝を受けることなく直接大循環に入り,脳を含む各臓器に運ばれる.環境中の有機溶剤濃度が低下すれば,吸気から血液に移行する有機溶剤よりも血液から呼気に移行する有機溶剤の量が増加し,排泄の方向に向かう.
・多くの有機溶剤が共通して引き起こす急性影響は,麻酔作用,粘膜刺激作用,皮膚脱脂作用によるものである.
・一定濃度以上の有機溶剤への繰り返し曝露により,有機溶剤の種類に特異的なさまざまな臓器障害,すなわち末梢・中枢神経障害,肝障害,腎障害,貧血,生殖障害,癌などが引き起こされる.
◆治療方針
A曝露からの離脱
有機溶剤への曝露を取り除くことが第一である.曝露量と症状との間の時間的な関係の記述は有機溶剤中毒診断のための有力な根拠にもなる.症状は有機溶剤への曝露からの離脱により徐々に回復するが,完全に回復するかどうか,十分な回復までにかかる時間は,曝露量,曝露期間,あるいは障害の程度に依存する.
Bその他の治療
対症療法,癌に対する治療を行う.なお1,2-ジクロロプロパンへの曝露による胆管癌の病理組織学的解析では通常の胆管癌との違いが報告されているが,有機溶剤によって引き起こされる癌に対して特異的な治療は確立されていない.
C再発予防
有機溶