Aテーピングとは
解剖学的な構造に沿って粘着テープを規則正しく巻く方法.ギプス固定などの硬性固定と包帯固定などの軟性固定の中間に位置する.外傷急性期に患部を固定・圧迫し安静を保つ応急処置(RICE)や,運動時の外傷・障害の予防・再発予防を目的とする.スポーツ現場では,筋機能を補助しパフォーマンス向上を目的とするものもある.
B診療の実際
整形外科診療で最も使用頻度が高いのは,手指・足趾の骨折や靭帯損傷に対するバディテーピングである(図1図).転位の少ない骨折や側副靭帯損傷などに対し,受傷関節の近位,遠位を隣接指とともに固定し,一定の関節運動を許可する.硬性固定ほどの強度はないので,他部位の骨折や靭帯損傷に対しては,適用に注意を要する.
C注意点
瘙痒感,水疱形成,循環障害などの合併症があり,適切な強度と使用材料の選択が求められる.またテーピングは時間経過とともに緩む.固定性を過信せず,用途によって適宜巻き直す.
D種類
1)非伸縮性テープ:損傷部の関節可動域を強く制動・固定する.
2)伸縮性テープ:制動・固定にある程度の伸縮性を期待する場合や,筋肉をサポートする場合に使用.
3)アンダーラップ:テープによるかぶれを防止し皮膚を保護する.
4)アンカーテープ:固定・圧迫しようとする関節や筋肉の上下または左右に巻く.テーピングの最初と最後に行う.
5)サポートテープ:末梢部のアンカーテープからはじめ,中枢部のアンカーテープで止める.靭帯の走行に沿ったテープやそれを補強する多彩な種類の組み合わせで,外傷のメカニズムに合わせて特定の動きを制限し,関節機能を補強する.
1)~5)を組み合わせて目的に応じた強度の固定を行う.
頻度が高く,絆創膏固定術として診療報酬が算定される膝関節内側側副靭帯損傷と足関節捻挫(外側靭帯損傷)に対するテーピング(図2図,図3図)の例を示す.側副靭帯損傷への固定(図2図