A関節穿刺の目的
関節穿刺の目的としては,①急性関節炎の鑑別,②関節内に出血をきたす骨折/靭帯損傷の評価,③液体貯留で上昇した関節内圧の除圧,④ヒアルロン酸やステロイドなどの薬剤の関節内投与が主にあげられる.
1.急性関節炎の鑑別
細菌性関節炎,結晶性関節炎,炎症性関節炎などを鑑別するために関節穿刺を行う.
1)吸引した関節液の性状(外観,粘稠度)を確認する.
2)関節液内の細胞数,ブドウ糖の値,結晶の有無,細菌培養なども鑑別に用いる.
2.関節内に出血をきたす骨折/靭帯損傷の評価
関節穿刺にて血液が吸引される場合,関節内の骨折や,靭帯・半月板損傷など外傷の存在が示唆される.関節内骨折の場合,吸引した血液に骨髄腔から漏出した脂肪滴が確認されることがある.
3.関節内圧の除圧
関節液や血液の貯留により関節内圧が上昇すると疼痛の原因となるため,関節穿刺による除圧を行うことがある.
4.薬剤の関節内投与
関節炎や変形性膝関節症の治療のために,ステロイドやヒアルロン酸などの薬剤を関節内に注入する.
B関節穿刺の実際
関節は本来無菌組織である.したがって関節穿刺の際は清潔操作に注意を払う必要がある.穿刺部位およびその周囲をポビドンヨードやクロルヘキシジンアルコールで十分に消毒し,できれば2回繰り返す.関節穿刺の手技に習熟していない場合は,滅菌手袋を使用したり,あらかじめ穿刺部位をマーキングしておき,消毒後も穿刺部位を確認できるようにする.吸引を行う場合には,注射針は18~21Gの太めの針を,薬液投与の場合は23~25Gの細めの針を,関節の大きさに応じて使用する.穿刺する関節の解剖学的構造を熟知することはもちろんであるが,超音波ガイド下で行うことにより関節腔内へ確実に針を進めることができる.また,薬液を注入することで関節腔が広がれば,関節腔内に注入できていることが確認できる.