診療支援
治療

低出力超音波パルスによる骨折治療
low-intensity pulsed ultrasound for fracture repair
野坂光司
(秋田大学大学院准教授・整形外科学)

治療のポイント

・骨折の治癒過程には,適切な荷重など機械的刺激が効果的であることが知られている.

・低出力超音波パルスは,微弱な超音波(30mW/cm2)を1秒間に1,000回というパルス状にして,1日1回20分間,専用の機器を骨折部にあてることで骨折治癒を促進する治療法である.超音波そのもののエネルギーは非常に低く,痛みを感じることはない.

◆病態と診断

・骨折には,受傷直後の「新鮮骨折」と,骨折直後から治療を行っても骨癒合が得られない遷延癒合・偽関節とよばれる「難治性骨折」がある.

・新鮮骨折に対する効果:二重盲検プラセボ比較臨床試験で,低出力超音波パルスにより,骨折治癒期間を約4割短縮する効果が報告されている.

・難治性骨折に対する効果:倫理的配慮から研究デザインの限界はあるが,難治性骨折に対しても多くの有効性が報告されている.

◆治療方針

 新鮮骨折では,四肢の開放骨折または粉砕骨折に対して手術を施行したあとで,受傷から3週間以内に低出力超音波パルス治療を開始した場合のみ保険適用となる.難治性骨折では,3か月以上手術やギプスによる固定治療を行っても骨癒合が得られない四肢骨折の場合,保険適用となる.

 難治性骨折に対する低出力超音波パルス治療に影響を及ぼす因子として,受傷後経過期間,骨折部間隙,適切な固定性などがあげられ,骨癒合機転が低下している遷延癒合・偽関節ほど,低出力超音波パルスの治療効果は低下する傾向にある.また,脛骨など体表から近い位置にある骨折に比べて,大腿骨など体表から深い位置にある骨折では,低出力超音波パルスの治療成績が劣るとする報告がある.低出力超音波パルス治療器の照射部位と方向が骨折部に正確に設置されているか,常に配慮することが重要である.特に難治性骨折では,低出力超音波パルス治療の適応,継続の判断はしっかりと行う必要があり,ほかの治療法に移行することも考慮に入れる

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