診療支援
治療

鎖骨骨折
clavicle fractures
吉田昌弘
(愛知医科大学教授(特任)・整形外科)

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ニュートピックス

・鎖骨骨幹部骨折保存加療後6週での上肢機能評価スコアが低い場合,症候性偽関節発生リスクが上がることが報告されている.

◆病態と診断

・鎖骨骨折は,特に活動性の高い若年者で自転車やバイクからの転倒,激しいコンタクトスポーツで受傷することが多く,全骨折の約2.6%を占める.80%以上の鎖骨骨折は骨幹部で発生し,次に遠位1/3での骨折が多い(15~20%).

・多くの鎖骨骨折は外観上で鎖骨の変形が確認可能であり,単純X線画像で診断可能である.

◆治療方針

A治療の歴史―保存加療か手術加療か

 鎖骨骨幹部骨折の治療の変遷として1960年,Neerが鎖骨骨幹部骨折に対して保存加療を施行した結果,その偽関節発生率(骨折部が癒合しないこと)は1%以下であったと報告する.この報告がその後の鎖骨骨幹部骨折の治療を保存加療中心へと導いていくこととなる.しかし,この報告には子どもの症例が多く含まれていたという背景があり,偽関節率が低く見積もられてしまっていたという経緯がある.

 その後2005年に鎖骨骨幹部骨折保存加療2,144例のシステマティックレビューが報告され,転位のある症例のみに注目すればその偽関節率は15.1%と決して低くないことが明らかとなった.この頃から転位や粉砕の有無,女性,高齢といった偽関節のリスクファクターが次第に明らかになっていった.

 そして2007年に保存加療から手術加療へと鎖骨骨幹部骨折治療法のパラダイムシフトが起こることとなる.カナダからの多施設ランダム化試験の報告がなされ,転位のある鎖骨骨幹部骨折に対して観血的骨接合術を行えば,その偽関節発生率,変形癒合発生率は保存加療と比較し有意に低下するばかりでなく,1年後の機能評価も保存加療と比較し有意に改善することが記された.この2007年のレビューの発表以降,鎖骨骨幹部骨折の治療法の中心は保存加療から手術加

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