頻度 (上腕骨近位端骨折の発生率は,すべての骨折の約7%,上腕骨骨折の約80%を占めている)
ニュートピックス
・上腕骨近位端骨折は,保存的治療が適応であるが,社会的背景により手術的治療(骨接合術)が選択される場合がある.高齢者の上腕骨近位端骨折には,リバース型人工肩関節置換術(RSA)が使用可能となったが,日本整形外科学会を主導に術者の資格が認定された.
治療のポイント
・高齢者では,大腿骨近位部骨折(股関節),橈骨遠位端骨折(手関節),脊椎圧迫骨折と並んで好発部位の1つである.
・小児では,成長軟骨板(骨端線)損傷を伴う場合が多い.
・上腕骨近位部骨折は,転位の有無で治療方針が異なり,適切な治療を行わないと肩関節の機能障害が遺残する.
・転位がある症例では,徒手整復では整復位の獲得が困難であり,整復できた場合も整復位の保持が困難であることが多く,手術適応となる.
◆病態と診断
A病態
・肩関節は,関節のなかで最も大きな可動域をもつ関節であり,上腕骨近位部骨折は,骨に付いている筋肉,腱により最大4つの部分(上腕骨頭,大結節,小結節,骨幹部)に分かれて転位する(図).上腕骨近位端骨折は,若い人ではスポーツや交通事故などの強い外力によって生じ,小児では骨端線(成長線)を含んで損傷する場合が多い.高齢者では転倒などの軽微な外力で生じることが多い.
B診断
・症状としては,転倒などの外力が加わったのちの,肩関節の疼痛と可動域制限がある.
・身体的所見としては,肩関節の腫脹を認める.
・転位がある場合は単純X線像で診断が容易であるが,転位がない場合でも臨床症状があれば,骨折はないと断言せずに外固定を行う.
・小児では,成長軟骨板(骨端線)を骨折線と間違えないようにする.
・診断の確定,治療方針の決定には,3D画像も含めたCT検査が有用である.
C受傷時合併症
・脱臼:早急な整復が必要であり,整復後の転位の遺残で治療法