診療支援
治療

橈骨遠位端骨折
distal radius fractures
若林良明
(横浜市立みなと赤十字病院・副院長)

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GL橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版)

ニュートピックス

・新しい骨粗鬆症治療薬のアバロパラチド注が,2022年に承認・薬価収載,2023年1月に販売が開始され,骨形成促進を目的とする骨折後の骨粗鬆症治療の選択肢が増えた.

治療のポイント

・骨折の重症度,患者の社会的背景や活動性,希望などを考慮し,手術療法か保存的治療かを適切に選択する.

・治療中に生じる可能性のある合併症についての患者説明と,発生した場合の早期対応が重要である.

・立った高さからの転倒など,軽微な外傷で受傷した中高齢者では,骨粗鬆症による脆弱性骨折の可能性を念頭におき,骨粗鬆症の診断と適応があれば治療開始を検討する.

◆病態と診断

A病態

・転倒して手をついて(低エネルギー外傷で)受傷するケースが最多であり,高エネルギー外傷での受傷は男性に多い.

・本邦での発生は人口1万人あたり10.9~14人,女性が男性の約3倍で,70歳以上では若年に比べて男性で2倍,女性で18倍と高齢者に多く発生する.

・関節面の構造が破綻する関節内骨折(34~46%)と,関節面が保たれている関節外骨折(54~66%)に大別され,転位の方向は背側が圧倒的に多い.

・小児では成長軟骨のある骨端線の強度が弱いため,この部分で一部骨折を伴いながら骨端部がずれるようにして受傷する(骨端線損傷).

B診断

局所の変形,腫れ,痛み,圧痛と,単純X線の正面・側面像から診断される.

・関節内骨折の転位の評価,手術計画などにはCTが有用である.

◆治療方針

 橈骨遠位端骨折の治療の目標は,日常生活や労務作業のうえで問題となるような痛みや機能障害を残さずに骨癒合を得ることである.保存的治療の適応であっても,すみやかな社会復帰や日常生活動作の獲得を望む場合には,外固定期間や可動域訓練の期間の短縮をはかり,年齢にこだわらず手術療法が選択される.

A保存的治療

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