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治療のポイント
・手根骨骨折は初診時に見逃すことも多く,X線で骨折が明らかでなくても症状から疑わしければ放置せずに精査を行う.
・手根骨,手指骨の骨折に対する保存治療では,部位により必要な外固定期間が変わる.
Ⅰ.手根骨骨折
◆病態と診断
A病態
・8つの手根骨のなかで,骨折の頻度は舟状骨が最も高い.三角骨,有鉤骨がこれに次ぐ.
・手根骨骨折は転倒で受傷することが多いが,ほかの受傷機転として,舟状骨骨折ではパンチング,有鉤骨鉤骨折では野球やテニスなどでグリップエンドからの衝撃がある.
・特に舟状骨骨折は診断・治療が遅れると骨癒合せず偽関節となる.さらに10年程度の経過で進行し,二次性に変形性手関節症に至る.
・舟状骨骨折では,骨への血流の影響で近位部での骨折ほど骨癒合しにくい.
・有鉤骨鉤骨折を放置すると屈筋腱断裂を生じるリスクがある.
B診断
・受傷機転,圧痛部位から骨折の可能性を疑う.
・通常の手関節X線2方向のみでは見逃すことも多く,舟状骨骨折では斜位や舟状骨撮影,有鉤骨鉤骨折では手根管撮影を追加する.
・詳細の把握にはCTが有用である.
◆治療方針
A保存療法
舟状骨骨折のなかで転位が1mm以内の新鮮例は,6~8週のギプス固定にて90%程度で骨癒合する.
三角骨骨折では背側皮質の裂離骨折が多く,体部骨折が次ぐ.1か月程度の外固定で軽快する.
有鉤骨鉤骨折新鮮例では,ギプス固定も選択肢になるが,血流が乏しく骨癒合しにくい.
B手術療法
舟状骨の新鮮骨折でも,転位がある場合や長期間の外固定ができない場合には内固定手術を行う.遷延治癒・偽関節に対する手術では骨移植も必要となる.
有鉤骨鉤骨折で特に早期のスポーツ復帰を希望する場合,骨片切除手術を行う.
■専門医へのコンサルト
・早期復帰を希望する手根骨骨折や手術を要する難治例は,整形外科,手外科へコンサルトする.
■患者説明のポイント
・受傷直後のX