診療支援
治療

大腿骨頭すべり症
slipped capital femoral epiphysis(SCFE)
遠藤裕介
(川崎医科大学准教授・骨・関節整形外科学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・健側への予防的ピンニングは合併症が少ないため有用性はある.ただし,厳重な経過観察と,選択できるように手術時の提案を行うべきである(World J Orthop 13:515-527,2022,EFORT Open Reviews 7:164-173,2022)

治療のポイント

・早期診断が最も重要であり,病態は進行性であるため必ず手術が必要であることを説明する.

・急性型の場合には骨壊死のリスクが高い.

・軽症の慢性型であっても,重症化しないように可及的早期に骨頭を安定化させる.

・高度の変形症例では,インピンジメント症候群を生じ早期の変形性股関節症の原因となるため,矯正手術が必要となる.

・両側例もあるので,少なくとも骨端線閉鎖までは経過観察を要する.

◆病態と診断

A病態

・大腿骨近位成長軟骨板が,成長期の強度の低下に伴い,同部にかかる剪断力のために破綻をきたした状態である.

・力学的負荷が関係し肥満の男児に多いとされる.通常,大腿骨近位骨端部が近位骨幹端に対して後内側に移動する.

・骨頭と骨幹端が連続性を保ちながら少しずつ移動するため歩行可能な場合が多い.Loder分類では安定型と判定される.通常,慢性の経過をとり,80%以上が安定型に分類される.転倒などの軽微な外力により骨頭と骨幹端の連続性が失われ分離した状態では歩行不能となり,不安定型と判定される.

B診断

・主訴として股関節痛だけでなく膝痛が多いことに留意する必要がある.長期の膝痛を訴える児では股関節の検査を行うべきである.

・臨床所見として,患側股関節では屈曲すると外旋していく現象(Drehmann徴候)が認められ,すべりの重症度が大きいほど外旋外転傾向や跛行が強くなる.急性型では疼痛が強く歩行不可能である.

・画像診断の基本はX線検査であり,股関節を2方向で評価し健側との比較を行う.側面像から骨端と骨

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