診療支援
治療

膝靭帯損傷
ligament injury of the knee
川口航平
(東京大学・整形外科学)

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GL前十字靭帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019(改訂第3版)

治療のポイント

・どの靭帯の損傷であるか,損傷形態や程度,損傷時期などの診断が大切であり,今後の治療方針を決定するうえで必須である.

・膝靭帯損傷のなかでは前十字靭帯(ACL)損傷が最も頻度が高く,再建手術が必要になることが多い,次に頻度の高い内側側副靭帯(MCL)損傷は保存加療で治癒することが多い.

◆病態と診断

A病態と疫学

・膝関節は前十字靭帯(ACL),後十字靭帯(PCL),内側側副靭帯(MCL),外側側副靭帯(LCL)の主な4つの靭帯で支えられている.

・代表的な受傷機転として,ACLは着地や方向転換で膝を捻ることで受傷し,PCLはコンタクトスポーツや転倒で膝前面を強打して受傷する.MCL,LCLはそれぞれ膝を外反,内反することで受傷するが,交通事故のような高エネルギー外傷や大きなスポーツ外傷では複数の靭帯が損傷することもある.

・受傷頻度はACL,MCL,PCL,LCLの順である.

B診断

1.理学所見

・膝関節靭帯損傷の急性期の主な症状は膝痛・腫脹・不安定性であるが,損傷部位や程度によって症状は多岐にわたる.

・ACL損傷の診断の徒手検査は前方不安定性を評価するLachmanテストやpivot shiftテストを使用し,PCL損傷は後方不安定性を評価する後方引き出しテストを使用する.MCL,LCL損傷に関しては膝伸展位と30度屈曲位での,それぞれ外反ストレステストにて内側不安定性,内反ストレステストにて外側不安定性の評価を行う.受傷早期は疼痛が強く正確に徒手検査を実施することが困難なこともあるので注意が必要である.

2.画像所見

・まず単純X線像を用いて,それぞれの靭帯の付着部裂離骨折の有無や骨挫傷の有無などを確認する.ACLにおいては若年で,PCLにおいては年齢に関係なく脛骨付着部裂離骨折を生じやすく,靭

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