診療支援
治療

膝蓋骨脱臼
patellar dislocation
中山修一
(JR東京総合病院・整形外科主任医長)

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治療のポイント

・膝蓋骨はほとんどの症例で外側に脱臼し,容易に整復される.

・膝関節の血腫を伴う.

・骨折を伴わない初回脱臼は保存的に治療する.

・初回脱臼に対する保存治療での再脱臼率は,およそ5割とされている.

◆病態と診断

A病態

・膝蓋骨は外側に脱臼しやすく,脱臼時には血腫を伴い,内側膝蓋大腿靭帯(MPFL:medial patellofemoral ligament)が損傷される(図1図2).整復は容易で,来院時にはすでに整復されていることも多い.

・7割がスポーツ活動で,2割が日常生活で脱臼する.

・骨性の要素(下肢のアライメント異常や低形成),軟部組織の弛緩性により,さまざまな病態を呈し,ダウン症候群,ネイル・パテラ症候群など先天性疾患に合併することが知られている.

・初回脱臼,反復性脱臼(2回目以降),習慣性脱臼(屈曲すると必ず脱臼する),恒久性脱臼(常に脱臼している)に分類される.

B診断

・膝蓋骨の外側への転位を視診,触診,単純X線で確認する.

・すでに整復されている場合には,膝蓋骨を外方へ圧迫すると不安感を訴える(apprehension test陽性)ことを確認する.

◆治療方針

A保存療法

 骨折の合併のない初回脱臼には保存療法を行う.

1)急性期:脱臼を整復する.膝関節を伸展位にし,外側に転位した膝蓋骨を持ち上げ,そっと内側に押すと整復される.シーネや装具を用い伸展位で固定する.固定下であれば荷重歩行を許可してよい.

2)亜急性期:受傷後3週で脱臼防止パット付き装具に切り替え,可動域訓練・筋力訓練を開始する.

B手術療法

 骨折合併例や反復性,習慣性,恒久性脱臼症例は手術療法を検討する.

1.骨端線未閉鎖の症例

 膝蓋骨の近位や遠位で軟部組織による制動術を行う.

2.骨端線閉鎖後の症例

 MPFL再建術を行う.アライメント異常や低形成など骨性の要素が大きい症例には,脛骨結

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