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治療のポイント
・多角的アプローチによる保存治療が約90~95%の患者にて有効である.
◆病態と診断
A病態
・踵部痛の原因として最も頻度が高く,40~60歳の中年者に好発する.
・繰り返す機械的ストレスが引き起こす踵骨足底腱膜付着部の微小外傷や変性が原因である.
・危険因子:肥満,足関節の背屈制限,足部の筋力低下,扁平足,凹足,ランニング,長時間の立位・歩行など.
B診断
・特徴的な症状から本疾患を疑うことは容易である.長時間の立位・歩行後,長時間の座位からの動作開始時,朝起床時の一歩目などにおける強い踵部痛を訴える.
・足底腱膜の踵骨付着部である踵骨隆起内側突起周囲に圧痛点がある.
1.鑑別
・絞扼性神経障害(足根管症候群,Baxter's neuropathy),踵部脂肪褥炎,足底線維腫症,骨髄炎,踵骨疲労骨折,腫瘍,踵骨骨端症(Sever病)など.両側性の場合は脊椎関節炎などの腱付着部炎を伴う全身性疾患を疑う.
2.画像
・他疾患との鑑別に有効である.単純X線側面像にて踵骨棘を高頻度に認めるが,その存在は診断には必須でない.MRIや超音波検査では腱膜の肥厚を認める.
◆治療方針
A保存治療
まずは足部への負担を減らす生活指導と,足底腱膜およびアキレス腱のストレッチを主体とした保存治療を行う.アーチサポートや踵への衝撃吸収用パッドを有したインソールを処方する.朝起床時の痛みが強い症例では夜間の足関節背屈位固定を行う.局所の副腎皮質ステロイド注射は,短期における除痛効果はあるが長期の予後改善効果は不明である.多数回の施行は踵部脂肪体の萎縮や足底腱膜の断裂をきたす可能性があるので避ける.
Bその他の治療
6か月以上の保存治療にて改善が得られない難治性の足底腱膜炎に対しては体外衝撃波治療が保険適用となる.近年では多血小板血漿(platelet-rich plasma)の局所注射の有効性を示す