診療支援
治療

脊髄損傷
spinal cord injury
渡辺雅彦
(東海大学領域主任教授・整形外科学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・脊髄損傷急性期では呼吸循環動態に注意し全身管理を行う.

・脊髄障害の高位と重症度,そして経時的変化を詳細に観察し記録する.

・骨傷を有し不安定性の強い例では,軽微な動きにより脊髄損傷が悪化する可能性があり,診断が確定するまで損傷部位の安静に留意する.

・脊髄損傷の病態を把握し,神経症状が悪化する場合には観血的治療を含めた可及的早期の介入をプランする.

◆病態と診断

A病態

・脊髄損傷は,外傷による強い外力が脊髄に掛かることによって引き起こされる.損傷高位以下の運動・知覚障害自律神経障害膀胱直腸障害などの症状が出現し,重篤で永続的な外傷性疾患である.

・受傷機転として,交通事故,転落事故,スポーツなどの高エネルギー外傷が多いが,近年では高齢者の転倒による頸髄損傷が増加している.

・損傷高位としては頸髄損傷が80%以上を占めている.

B診断

・受傷機転・受傷肢位・受傷エネルギーを問診で確認することは,脊椎・脊髄損傷の病態や重症度を考えるうえで重要である.

・受傷により感覚・運動障害,呼吸障害,排尿・排便障害,持続性勃起,徐脈や血圧低下などが発生した場合には脊髄損傷が強く疑われる.

・知覚障害の分布,主要筋の筋力,などの神経学的検査を行い,損傷高位を特定する.

・脊髄損傷の臨床評価ではAmerican Spinal Injury Association(ASIA)によるimpairment scaleが広く用いられている.脊髄損傷の麻痺をA(完全麻痺),B(不全麻痺:完全運動麻痺と一部知覚残存),C(不全麻痺:損傷レベル以下の運動機能は残存しているが,key muscleの半数以上がMMT3以下),D(不全麻痺:損傷レベル以下の運動機能は残存し,key muscleの半数以上がMMT3以上),E(正常)の5段階に分ける.

・画像診断では単純X線とCTで脊椎の損傷を確認し

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