診療支援
治療

思春期特発性側弯症
adolescent idiopathic scoliosis(AIS)
谷口優樹
(東京大学講師・手術部)

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治療のポイント

・側弯症は成長期に進行し,特に女児では初潮後2年以内までは進行リスクが高い.

・側弯症の評価は立位でのX線におけるコブ角を指標にする.

・コブ角20度以上の側弯症で成長期であれば,装具療法の適応となりうる.

・エビデンスのある保存療法は装具療法のみである.

・装具療法の目的はカーブの維持であるため,治療介入のタイミングを逸しないことが重要である.

◆病態と診断

A病態

・側弯症は冠状面での脊椎の“まがり”のことを指し,立位全脊椎X線でのコブ角〔最も傾いている頭側・尾側の椎体終板同士の成す角度(図a参照)〕が10度以上のものを側弯症と定義する.

・側弯症を呈する原因としては思春期に発症する思春期特発性側弯症(AIS)が最も多く,その8~9割は女児である.

B診断

・AISは“特発性”という言葉の定義上,除外診断であり,マルファン症候群などの基礎疾患がないことを確認する必要がある.

◆治療方針

 AISに限らず側弯症は成長期に急激に悪化し,成長が止まると進行も止まる.しかしながらAISの場合,50度以上の胸椎カーブ,40度以上の腰椎カーブは骨成熟後も緩徐に進行し,将来胸郭の変形による拘束性換気障害や脊柱変形に伴う腰背部痛を呈することがわかっているため,これらの角度に達した症例では予防的に手術療法を行うことが推奨される.逆にいえば,AISの治療では早期に発見し,適切な保存療法を成長期に行うことで手術適応のカーブに至らせないことが目的となる.現状ではAISの進行予防に高いエビデンスを有する保存療法は装具療法のみであり,その他の治療法にはエビデンスはほとんどない.そのため,医療者は適切な情報提供を行い,患者や家族が適切な治療を受ける機会を失わないように留意する必要がある.

A成長予測

 側弯症は成長期に悪化するため,側弯症治療においては成長段階を適切に把握し,成長予測をすること

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