頻度 あまりみない
GL泌尿器外傷診療ガイドライン 2022年版
ニュートピックス
・2022年8月に「泌尿器外傷診療ガイドライン」が発刊された.
治療のポイント
・腎外傷では,循環動態が安定していれば,非手術療法をまず選択する.
・造影CTでの造影剤の血管外漏出や腎深在性損傷では,血管造影,経カテーテル動脈塞栓術(TAE:transcatheter arterial embolization)の適応となる.
・尿管損傷は医原性が多く,術中に診断できない症例も多い.修復術の方法や時期は多様で泌尿器科専門医にコンサルトする.
◆病態と診断
A病態
1.腎外傷
・本邦では鈍的外傷によるものがほとんど(95%)で,刺創,銃創による穿通性外傷は諸外国に比べてまれである.受傷機転は交通外傷,転倒・転落,スポーツの順に多い.
・医原性腎外傷は,経皮的腎瘻造設術,経皮的腎砕石術などの術後に仮性動脈瘤,動静脈瘻として生ずる.
・腎外傷の分類はJAST分類2008(日本外傷学会腎損傷分類)がよく用いられ,Ⅰ型:腎被膜下損傷,Ⅱ型:腎表在性損傷,Ⅲ型:腎深在性損傷に分類される.
2.尿管損傷
・多くは医原性に生ずる.産婦人科,消化器外科,泌尿器科の手術の順に多い.術中の尿管への鋭的損傷以外に,縫合糸による縫い込みやエネルギーデバイスによる熱損傷による尿管閉塞・狭窄がある.また手術操作に伴う尿管の血流障害や熱損傷の影響が術後しばらくして徐々に顕在化し,遅発性に尿溢流あるいは閉塞を生じる場合もある.
B診断
1.腎損傷
a.臨床所見
・側腹部・腰背部の打撲の有無,血尿の有無,貧血の有無,バイタルサインのチェックが重要である.収縮期血圧が90mmHg未満の症例は,手術治療が必要となる可能性がある.
b.画像検査
・造影CTがgold standardである.撮影方法は,早期相,腎実質相で動静脈損傷の評価をすることはもちろん,尿溢流を評価する