診療支援
治療

嚢胞性腎疾患
cystic kidney disease
浮村 理
(京都府立医科大学教授・泌尿器科学)

頻度 よくみる(後天性嚢胞性腎疾患)

頻度 ときどきみる(先天性嚢胞性腎疾患)

治療のポイント

・後天性嚢胞性腎疾患は,良性では概して経過観察でよく,有症状の場合は対症療法を行う.多発性腎嚢胞では,腎細胞癌の発生率が比較的高く,悪性では部分切除・腎摘出術が行われる.複雑性嚢胞では,嚢胞内容液の成分の穿刺吸引による介入も考慮する.

・概して遺伝性嚢胞性腎疾患の根治療法はなく,腎機能障害や局所症状に対する対症療法が一般的である.

◆病態と診断

A病態

1.後天性腎嚢胞

・単純性腎嚢胞は,0.5~4cmの大きさをもち,嚢胞壁は平滑で,境界明瞭かつ円形である.

・多発性腎嚢胞は,慢性腎臓病患者の過半数という高頻度でみられ,両腎にそれぞれ4個以上あることで診断される.通常は無症状であるが,時に出血・感染を伴い,臨床症状として血尿,側腹部痛がみられることがある.

2.先天性・遺伝性

・常染色体顕性(優性)多発性嚢胞腎は,常染色体顕性(優性)遺伝により,両腎に大小の嚢胞が多数できる病態で,成人になってから発見されることが多く,60歳までに約50%が末期腎不全に至るという報告もある.

・常染色体潜性(劣性)多発性嚢胞腎は,常染色体潜性(劣性)遺伝により,両腎に小さい嚢胞が多数できる病態で,発生頻度は1万人に1人とされ,多くは乳幼児期までに末期腎不全に陥る.最近は生前に診断されることも多い.

・先天性嚢胞性異形成腎では,多くは片腎において,ぶどう房状に多数の嚢胞ができる.正常な腎組織が作られず,病側の腎盂は形成されず,尿管は閉塞あるいは途絶しており無機能腎である.最近は胎児エコーによる生前診断が増えている.嚢胞がない対側腎は代償性に肥大することが多い.

・髄質海綿腎は,腎の集合管が嚢胞状に広がる先天性疾患で,多くは両腎に起きる.成人発見例が多いが,小児期にもみられ,多くは腎結石・血尿・尿路感染で発見される.

・ネフロン癆

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