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治療のポイント
・多くが保存的治療で完結し,手術療法となる症例はきわめてまれである.
◆病態と診断
A病態
・腎は生理的に呼吸や体位に伴い移動するが,臥位から立位への体位変換で腎が2椎体以上もしくは5cm以上下垂する場合を遊走腎(腎下垂)という.
・腎は腎茎部の腎動静脈,腎被膜と腎周囲脂肪組織,周囲の腹膜や筋膜により後腹膜に固定されている.これら周囲組織の脆弱性や発育不良,長い腎茎部が,過剰な腎の移動の原因となる.
・過剰な腎静脈の伸展や尿管への尿の流出不良が起こるため静脈内圧や腎盂内圧の上昇をきたし,側腹部痛や腰背部痛,悪心,嘔吐,血尿,蛋白尿などの症状が出現することがある.
・無症候性がほとんどで,症状を呈する症例は10~20%程度であり健康診断の尿検査異常から診断に至ることが多い.痩せた女性に多く,左腎に比べ右腎が原因となることが多い.
B診断
・痩せた症例に限るが,触診により立位と臥位で腎の下垂が確認できる.
・排泄性尿路造影で立位と臥位を比較し,2椎体以上もしくは5cm以上腎が下垂していることで診断となる.他の疾患を疑い造影CTを施行した場合においては,直後に立位と臥位で腹部X線を撮影することで代用できる.
・超音波検査では立位と臥位で腎の可動性や体位変換による軸のずれ,カラードップラーで血流の変化が確認できることがある.
・腎シンチグラフィーやレノグラムでも立位と臥位で腎の下垂を確認できる.
・疼痛や血尿がある場合,他の泌尿器疾患を除外するためCTや膀胱鏡検査などを考慮するべきである.
◆治療方針
A保存的治療
疾患のメカニズムを説明し理解してもらうことが重要である.症状を緩和する体位をとることや,痩せた患者では内臓脂肪を増やすように食事指導を行う.運動で筋肉量を増やすことやコルセットで腎下垂を予防することも有用とされる.
B薬物療法
対症的に薬物療法を選択する.疼痛に対しては鎮