診療支援
治療

尿膜管腫瘍,尿膜管嚢胞
urachal tumor and urachal cyst
雑賀隆史
(愛媛大学教授・泌尿器科学)

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GL膀胱癌診療ガイドライン2019年版

治療のポイント

・限局性尿膜管癌では尿膜管摘除+膀胱部分切除とリンパ節郭清が推奨される.

・進行尿膜管癌では大腸癌における化学療法が応用されることが多い.

・尿膜管嚢胞感染に対しては,抗菌薬加療や切開排膿ドレナージによる急性期治療後に尿膜管摘除が考慮される.

◆病態と診断

A病態

・尿膜管は臍と膀胱頂部を結ぶ正中臍索の一部となっているもので,胎生期の尿生殖洞から膀胱が派生する際に尿膜が牽引されたのち閉鎖されてできたものである.通常,尿膜管は胎児期に線維性組織を残すのみで消退するが,出生後も残存しているものが尿膜管遺残で,これらに起因する病態が尿膜管遺残症である.形態により尿膜管開存,尿膜管洞,尿膜管嚢胞および尿膜管憩室に分類される.

・尿膜管腫瘍はこの尿膜管遺残に発生した腫瘍であり,先天性嚢胞や感染に伴う膿瘍などの良性腫瘍と,尿膜管上皮が癌化した尿膜管癌の悪性疾患に分けられる.

B症状と診断

・非感染性の尿膜管嚢胞は無症状であることがほとんどで,検診や他の疾患に対するCT,MRI,超音波などの画像検査時に偶発的に指摘されることが多い.

・感染性のものは臍炎より波及することが多く,比較的若年に多く,臍部痛発赤や排膿を訴える.さらに感染が波及すると膿瘍化することで発熱や強い腹痛を訴え,まれに腹膜炎やイレウスを引き起こすことがある.膀胱に近接した部位で感染が起きた場合には繰り返す膀胱炎症状を呈することがある.感染性嚢胞,膿瘍の診断は症状と炎症反応から腹部画像検査による.尿膜管遺残症の可能性を考慮して画像診断しなければ,小病変では見落とす可能性があるので注意すべきである.

・尿膜管癌は無症候性の肉眼的血尿を訴えることが多いが,尿膜管に沿って膀胱外へ進展するために,進行した状態で診断されることも多い.そのため初診時から膀胱刺激症状や腹部腫瘤などの症

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