診療支援
治療

神経因性膀胱
neurogenic bladder(NB)
三井貴彦
(山梨大学大学院教授・泌尿器科学)

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GL脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン2019年版

ニュートピックス

・抗コリン薬またはβ3 作動薬などによる薬物療法,および行動療法などの既存治療で効果不十分または既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁に対する治療法として,ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が保険収載されたため,治療の幅が広がった.

治療のポイント

・診断や治療を行ううえでのポイントは,①自排尿(特に随意的な自排尿)が可能か? ②膀胱内の高圧環境や上部尿路障害はないか?である.この2点を考えながら,適切な尿路管理を選択して実践していくことが,神経因性膀胱の治療として重要である.

◆病態と診断

A病態

・下部尿路機能は,脳・脊髄などの中枢神経と末梢神経によって構成される神経反射経路によって制御されているため,神経疾患によって,尿を溜める蓄尿機能と尿を排出する排尿機能で構成される下部尿路機能に障害が生じる.このような病態を神経因性膀胱という.

・神経因性膀胱では,症候性尿路感染や上部尿路障害などの生命予後や尿失禁などのQOLに影響を与える可能性があるため,適切な診断や治療を要する.

B診断

・原因となる疾患からある程度病態は把握できるが,同じ原因疾患でもその病態は多岐にわたるため,下部尿路機能の評価は必須である.

1.問診,理学的・神経学的所見

・原因となる神経疾患の病歴の聴取,質問票を用いた下部尿路症状やQOLの評価を行う.球海綿体筋反射の有無や肛門括約筋トーヌスなど,排尿反射にかかわるレベルの神経所見は,評価を行う必要がある.

2.排尿日誌

・侵襲性も少ないため必ず行うべきである.尿量,排尿回数,機能的膀胱容量,失禁の有無,多飲・多尿の有無,排尿パターンなど,下部尿路機能に関する多くの情報が得られる検査である.

・治療効果の判定にも用いることができる.通常は3日間程度記録することが望ましい.

3.尿流測定・

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