Ⅰ.膀胱腟瘻
頻度 ときどきみる
治療のポイント
・経腟・経腹式瘻孔閉鎖術を行う.
・瘻孔創面を十分剥離・露出し,閉鎖面が重ならないよう複数層で縫合する.
・瘻孔が大きい場合は,大陰唇脂肪組織や大網などの組織フラップを閉鎖面間に挟み込む.
◆病態と診断
A病態
・膀胱と腟の間に瘻孔が形成され,腟から尿失禁が生じる.尿路腟瘻のなかで最も頻度が高く,婦人科,泌尿器科手術による膀胱損傷が原因のことが多い.その他,放射線照射,悪性腫瘍,閉塞性分娩,外傷,ペッサリーなどの異物圧迫による膀胱損傷で生じる.
B診断
・Dry timeのない持続性尿失禁を認める.
・腟内診で,瘻孔・尿流出を確認する.わかりにくい場合は膀胱内にインジゴカルミン加生理食塩液を注入すると青色の液漏出が確認できる.
・膀胱鏡で,瘻孔の性状,位置を確認する.尿管口との距離が重要である.
・膀胱造影,CTで,瘻孔,周囲組織の性状,尿漏出の確認と上部尿路の観察を行う.
・悪性腫瘍の既往を有する場合,生検で再発の有無を鑑別する.
◆治療方針
原則,膀胱腟瘻閉鎖術を行う.術後発生の小瘻孔の場合,尿道カテーテル留置で自然閉鎖も期待できるが,治癒率は低い.
ほとんどの場合,経腟式で修復可能である.瘻孔創面を十分剥離し,トリミングにて血行良好な創面として,閉鎖面が重ならないよう複数層で縫合する.
瘻孔が大きい場合,周囲組織が脆弱な場合は大陰唇脂肪組織の有茎フラップを閉鎖面間に挟み込むと治癒率が向上する.後三角から膀胱頂部寄りの瘻孔の場合は経腹式閉鎖術を行い,大網を組織フラップとして閉鎖面間に挟み込む.
Ⅱ.尿管腟瘻
頻度 あまりみない
治療のポイント
・尿管ステントを留置して保存的に観察する.
・瘻孔が閉鎖しない,尿管狭窄がある場合は尿管膀胱新吻合を行う.
◆病態と診断
A病態
・尿管と腟の間に瘻孔が形成され,腟から尿失禁が生じる.子宮摘除,帝王切開,骨盤臓器脱手術などによ