Ⅰ.停留精巣
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GL停留精巣診察ガイドライン(2005)
◆病態と診断
A病態
・腹腔内に発生した精巣が胎児期の陰嚢への下降経路の途中で停留し,陰嚢内に精巣が局在していない病態である.発生率は男児の2~5%で,低出生体重児や早期産児では高頻度となる.生後6か月までは自然下降が期待できる一方で,治療せずに放置すると幼児期以降は組織障害をきたし,不妊症や悪性腫瘍などのリスクとなる.
B診断
・触診が重要で,鼠径部から陰嚢近傍に精巣が触知できる触知停留精巣と触知不能な非触知停留精巣に大別される.非触知停留精巣は停留精巣の約20%を占め,精巣が腹腔内に存在する腹腔内精巣,胎児期の精巣捻転などに伴い著明な萎縮をきたした消失精巣,肥満や多動により覚醒時には触診困難な症例などが含まれる.
・非触知停留精巣は,対側が正常に陰嚢内に局在する片側非触知症例と両側症例(片側非触知,対側触知停留精巣を含む)でその病因を異にする.片側症例では,消失精巣70~80%以上,腹腔内精巣約15%,触知困難であった鼠径部精巣5~15%と,消失精巣がその大多数を占める.一方,両側症例では,消失精巣約15%,腹腔内精巣約60%,鼠径部精巣約25%と,その多くは機能的な精巣が存在し,消失精巣はまれである.
◆治療方針
A治療の概略
生後6か月までは経過観察とし,自然下降がなければ1歳6か月頃までに精巣固定術を行う.両側非触知停留精巣や尿道下裂を合併する症例では,染色体検査やhCG負荷試験など内分泌学的検査を行う.
B治療の実際
1.触知停留精巣
鼠径部切開でアプローチし,精巣血管周囲の外側精索筋膜などを十分に剥離して,精巣を陰嚢皮膚と肉様膜の間に形成したdartos pouch内に縫合固定する.
2.非触知停留精巣
全身麻酔後に再度触診を行い,触知可能となれば鼠径部切開で精巣固定術を行う.
両側非触知停留精巣など腹腔内精巣が強