診療支援
治療

精巣腫瘍
testicular cancer
日向信之
(広島大学大学院主任教授・腎泌尿器科学)

頻度 あまりみない

GL精巣腫瘍診療ガイドライン2015年版

治療のポイント

・高位精巣摘除術と画像診断による転移検索を行い,組織型と臨床病期に基づき治療方針を決める.

・転移のない症例は原発巣摘除後に経過観察することもできるが,病理組織所見によっては放射線療法,化学療法が検討される.

・転移のある症例は化学療法の適応となる.腫瘍マーカーが正常化したのちに切除手術を行う.

・挙児希望時は化学療法導入前に精子保存を行う.

◆病態と診断

A病態

・発症年齢は20~30歳代に最大のピークがあり,AYA(adolescent and young adult)世代を通じて最も頻度の高い悪性腫瘍である.

・成人の精巣腫瘍の大半は胚細胞腫であり,組織型からセミノーマと非セミノーマに分けられる.

B診断

・無痛性の陰嚢内容腫大を契機に診断されることが多い.

・転移のある症例では,腫大リンパ節による腹部腫瘤や腹痛を主訴として医療機関を受診することもある.

・精巣腫瘍は硬い腫瘤として触知され,超音波検査で不均一な充実性腫瘤として描出される.MRIも診断に有用である.

腫瘍マーカーとしてLDHAFPhCGが用いられるが,高値を示さない症例もあるので,理学所見や画像診断を踏まえて総合的に診断する.

◆治療方針

 精巣腫瘍と診断された場合,転移の有無にかかわらずすみやかに高位精巣摘除術を行う.

 病理組織学的診断によりセミノーマ,非セミノーマに大別し,転移の部位や大きさから臨床病期を決定するとともに,転移のある症例ではIGCCC(International Germ Cell Consensus Classification)によるリスク分類(予後良好群,中間群,予後不良群)を行う.

A非転移例

 転移のないセミノーマに対しては経過観察あるいは予防的放射線照射または化学療法を,非セミノーマの場合は脈管侵襲がなければ経過観察,あれば化

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