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治療のポイント
・基本的に,水瘤の腫大により違和感などの症状が強い場合に治療の適応となる.
・小児では自然治癒を期待して2~3歳頃まで経過を観察する.
・治療には陰嚢水瘤穿刺術と根治術がある.
・小児では穿刺は行わず,成人では余剰な水腫壁を切除する.
◆病態と診断
A病態
・精巣は胎児期に下降し陰嚢内に到達すると,腹膜鞘状突起の先端部分は精巣を包む精巣固有漿膜として残存するが,その近位側の腹膜鞘状突起は出生までに閉鎖・退縮する.
・陰嚢水瘤は精巣固有漿膜の内容液の貯留により,陰嚢の腫大が生じた状態である.
・固有漿膜腔内に腹水が貯留し,それより近位の腹膜鞘状突起は閉鎖している場合(非交通性水瘤)と腹腔内との交通路が残存している場合(交通性水瘤)がある.
B診断
・触診で無痛性の柔らかい嚢胞状腫瘤として触知される.
・超音波検査で精巣を取り囲むように嚢胞性腫瘤が描出される.鼠径ヘルニアや精索の一部に内容液が貯留する精索水瘤との鑑別を要する.
◆治療方針
A小児
自然治癒が期待できるため2~3歳頃まで経過を観察する.穿刺や吸引は,感染・出血・臓器損傷の危険があるのみでなく,再発率も高いので禁忌である.鼠径ヘルニアの合併が疑われる際は手術を考慮する.成人の陰嚢水瘤に対して行われる手術は,精巣萎縮の可能性が高いため小児では行わない.
B成人
腫大による違和感が強いときに治療の適応となる.穿刺により黄色透明の内容液が吸引される.白濁の場合は精液瘤を考える.鼠径ヘルニアや精巣腫瘍が疑われる際に穿刺は禁忌である.手術はWinkelmann法やBergmann法が行われる.
■患者説明のポイント
・小児では自然治癒が期待されるが,学童期以降も改善がみられない場合は手術を考慮する.
・穿刺によって一時的な改善はみられるが,多くは再発する.穿刺の合併症として血腫がある.
・Winkelmann法は精巣固有漿膜を切