頻度 ときどきみる
治療のポイント
・健康若年者では,ほとんどの場合,無治療経過観察でよい.
・原因疾患があれば治療する.
◆病態と診断
A病態
・精液に血液が混入する病態である.精巣,精巣上体,精嚢,前立腺のいずれかの部位で出血すると血精液となる.
・ほとんどが特発性で数週から2か月程度で自然治癒するが,まれに難治性のものもあり,また原因疾患が隠れていることもある.
・原因疾患としては前立腺炎を主体とする尿路性器感染症が多く,まれに凝固系異常を伴う血液疾患,尿路性器奇形や悪性腫瘍の鑑別が必要となる.
・前立腺生検や前立腺手術などによる医原性の血精液症もあるが,これらは予測できる病態である.
B診断
・自覚症状(血精液)による.
・血精液の持続期間,射精や排尿に関連する随伴症状や,陰嚢部・会陰部の違和感や疼痛,外傷を含めた尿路性器に関する既往歴を聴取する.
・陰部の視診,触診と尿検査は原則として全員に行う.既往歴や随伴症状がない健康な若年者の場合は,精査は不要である.
・下部尿路症状や感染徴候を伴う場合は,尿検査に加え泌尿生殖器感染症検査を行う.
・血精液症が持続する場合には,超音波検査やMRIなどの検査を考慮する.前立腺肥大,前立腺癌,前立腺結石,精嚢嚢胞や精嚢出血がみつかることもあるが,血精液症の真の原因であるかは不明なことも多い.
・40歳以上であれば,前立腺癌の鑑別目的にPSA採血を追加するのがよい.
・肉眼的血尿を伴う場合は,膀胱鏡などを含めて膀胱癌の精査を優先する.まれに前立腺正中線嚢胞や尿道血管腫を認めることもある.
◆治療方針
特発性の場合には原則として経過観察でよい.患者の不安が強い場合には止血薬を処方することもある.炎症所見や感染症があれば抗菌薬治療を行う.会陰部の不快感や残尿感といった症状が持続し慢性前立腺炎の可能性があれば,植物エキス製剤,漢方薬や抗菌薬の投与を考慮する.